8-1-5.夏休み、火乃花の場合
ピンポーンのポにアクセントが付いたピンポーンが鳴り、エレベーターのドアが開く。
ちなみに、魔法街のエレベーターは、一般的に言う科学の粋を集めたエレベーターではない。
魔力が原動力となっているエレベーターだ。
街魔通りの街灯と同じく魔力蓄積機が存在し、その魔力蓄積機からエレベーターに取り付けられた魔力駆動機へと魔力が流れ、エレベーターを動かす機構が作動する仕組みだ。
エレベーターに乗った火乃花は迷わずに4Fのボタンを押す。ほとんど音を立てる事なく、上昇する感覚が体を包む。
またまたピンポーンと音が鳴りドアが開いた。
火乃花はエレベーターを降りて401号室の前に到着する。
ドアノブを握ろうとした時だった。部屋の内側にガチャリと勝手に開く。ドアノブを握ろうとした手をそのまま止めて驚いていると、中から出てきたのは遼だった。
「あれ、火乃花じゃん。1週間ぶり位かな?」
「あ、うん。そうね。」
「あ、龍人は中で暇してると思うから、よろしくね。俺はこれから用事があるからさ。」
そう言い残すと、手を振りながら遼はのんびりとした様子で部屋から歩き去る。
遼に軽く手を振ると、火乃花は病室の中へと入った。
奥のベッドに龍人が横になっている。身体中に包帯が巻かれ、半分包帯人間のような出で立ちだ。
「龍人君久しぶり。怪我はどお?」
「火乃花!良かった!暇になってこれからどうするか悩んでたんだよ。」
オモチャを見つけた子供みたいな笑顔をする龍人。
火乃花が負い目に思っている事に関して、何も思って無いのだろうか。
その部分が気になってしまって、どうも落ち着かない。
(もう!謝っちゃうのが1番よね。)
火乃花は心の中で自分に言い聞かせると、ベッドの傍にあった丸椅子に座ると、龍人に向けて頭を下げた。




