2-7-14.授業 基礎魔法
バランスを崩した鉄球は、不運にも横に並んでいたバルクの鉄球へ向かって行った。
「おいおい、まじかよ!止めろ!止めろって!」
「やべっ。無理かも!バルクわりい。」
龍人は何とか鉄球を止めようと魔力に力を込める。横に倒れていく鉄球の速度は緩やかになっていくが、バルクの鉄球にぶつかるのを防ぐ事は出来ない。そして、龍人の踏ん張りも虚しく鉄球同士がぶつかってしまう。バルクの鉄球は龍人の鉄球に弾かれ、反対側へと倒れていった。
「駄目だー!ここで落とすのは悔しすぎる!ファイト俺!」
バルクは倒れ行く鉄球の方向へと走り出した。掌の上に立てた棒が倒れる方向に走ると、倒れるまでの時間を稼ぐことが出来るのと同じ要領で、落ちる時間を少しでも稼ぐつもりなのだろう。だが、あれはあくまでも固形物の棒だから成り立っている物理の法則であって、今回の魔法による固定の場合にその法則が当てはまるのかは甚だ疑問である。
だが驚く事に、バルクの行動は功を奏したらしく、何人かの生徒を巻き込みながらも、鉄球を包む膜の再形成に成功していた。
一方、龍人はバルクの鉄球にぶつかった事によって鉄球の落下が止まったタイミングを利用して、魔法の膜を再形成する事に成功していた。
遠く離れた所で鉄球を頭上に掲げるバルクが叫ぶ。
「おい!龍人!今日の夕飯おごれよ!」
(いやいや誰のせいだし!ってか、そもそも今日初めて会ったのに夕飯おごれとか…流石にないだろ。あいつ、絶対馬鹿だ。)
敢えてシカトしよう。そう決めた龍人は、今度こそゴールに辿り着くために、再び魔力の操作に集中し歩き出した。




