2-7-12.授業 基礎魔法
龍人の手のひらに集中した魔力が、鉄球へと真っ直ぐ伸びていき、鉄球に到達すると魔力が鉄球を包み始める…と、思っていたのだが、
(こりゃあ難しいな。薄く広く伸ばさなきゃいけないのか。変に偏ると、魔力の膜に穴が空きそうだなぁ。)
実際に周りに居る半分位の生徒達も同じ段階で戸惑っているようだ。魔力が上手く広がらずに拡散してしまう者。包む事は出来たが、均等に広がっていないために、持ち上げる段階で変な方向に進んでしまう者。均等に包むことが出来ても、持ち上げた後にそのバランスが崩れてしまう者。
1発でクリアした火乃花の技量が窺い知れる。
龍人は慎重に魔力を広げていく。たっぷり10分程かけ、やっとの事で鉄球を包む事が出来た。多少凹凸があるが、ある程度は均等に包む事が出来ているはずだ。
すると、横で鉄球に苦戦していたはずの遼が声を上げた。
「お!持ち上がったよ龍人。このままゴールしてくるね!」
なんと、遼は一足先に持ち上げる事に成功していた。元々銃を媒体として、魔弾を撃つという戦闘スタイルの遼は、その特性上ある程度は細かい操作を会得していたのだろう。
持ち上げた鉄球がグラグラと揺れていてやや危ない気もするが、遼ならこのままゴールラインまでたどり着きそうだと思える。
(よし。俺も負けてらんないな。)
遼が進み始めたのを見て一気にやる気が出てきた龍人は、鉄球を包み込む魔力の膜に込める魔力を増大させると、鉄球をゆっくりと持ち上げ始めた。