2-7-11.授業 基礎魔法
火乃花がラルフと次の内容に向けて歩き出してから約5分後。周りのクラスメイト達は既に鉄球を持ち上げ始めていた。
ここまで様子見をして座っていた龍人は、取り敢えず火乃花の真似をして見ることにした。
手を鉄球にかざす。目を瞑り体の中心から魔力を精製して手のひらに集中させる。魔力が手のひらに集中したのを感じると、龍人は目を開いた。手が仄かに白く光っていた。火乃花が集中させていたのと比べると光がやや弱いが、とにかくこれでチャレンジしてみるべきだろう。
「うおりゃー!」
気合の入った掛け声が聞こえた方を見ると、バルクが魔力で持ち上げた鉄球を放り投げていた。鉄球は宙高く飛び、ゴールラインに到達する。が、地面に落ちると同時に光り、消えた。そして、バルクの目の前に鉄球が現れる。
「おーい、バルク。投げるんじゃ駄目だぞー。ちゃんと運べー!」
ゴールラインからラルフがニヤニヤしながらバルクに声を掛ける。
「ちくしょー!今のも運んだの内だろ!俺は面倒なのが嫌いなんだ!」
「じゃあそのままそこに残ってんだな!」
「くそっ!あの教師マジむかつく!」
バルクは鉄球に回し蹴りを放った。
鉄球は高速で転がり、ゴールまで半ばの辺りで止まり、再びバルクの前に現れた。
「ぬおぉお!くそー!」
「コントかよ。バルクって案外お馬鹿キャラか?」
とは言え、バルクみたいに鉄球をゴールラインまで投げる事は龍人には無理そうである。その辺りの事を考えると、バルクは身体能力向上系の無詠唱魔法に秀でているのかもしれない。
「ま、他人の事を考えててもしゃーないか。うしっ。やるぞ。」
龍人は小さく呟くと目の前の鉄球に集中した。




