2-7-10.授業 基礎魔法
火乃花は遼の問いかけにキョトンとした顔をすると、すぐに納得顔に変わって説明を始めた。
「簡単よ。自分の魔力を鉄球に飛ばすの。鉄球の周りに魔力を付帯させて、そのまま鉄球と自分を魔力で繋いだ状態にするのよ。そして、鉄球を持ち上げる。これが1番簡単じゃないかしら。魔力じゃないと動かない鉄球ってことは、上手く鉄球に対して力を加えれば簡単に動かせるはずよ。」
火乃花は説明を一通り済ませると、鉄球に手の平を向ける。手のひらの周りが白く光る。サッカーボール程の大きさになった所で、鉄球に向かって光が伸びた。光は鉄球を包んでいき、完全に光に包まれた所で火乃花が遼を見た。
「ここからが勝負よ。ここまででも結構魔力を使うけど、次は魔力に方向性を持たせないといけないからね。」
火乃花が顔を鉄球に向けると手のひらから伸びる光が不意に脈動し、光が更に輝き始める。火乃花が手を上にゆっくりと上げると、鉄球がその動きに合わせて少しずつ持ち上がって行く。そして、遂に火乃花の真上まで鉄球が上がった。
火乃花を見ていた上位クラスの面々から「おぉ」と感嘆の声が上がる。
火乃花は鉄球を上に浮かべたままゴールラインに向かって歩き出した。時々、紅白い光が不安定に揺らぎ、鉄球のバランスが危うくなるが、それでも鉄球が落ちる事はなく無事にゴールラインまで辿り着いた。
火乃花がゴールすると同時にクラスの面々拍手が巻き起こった。
ゴールラインでその様子を見守っていたラルフはニヤニヤしながら火乃花に声を掛けた。
「霧崎火乃花か。よく一回でコツを掴んだな。センスあるじゃん。」
「これ、かなり難しいわよ?1年生でやるレベルじゃない気がするんだけど。」
「おー。そこまで気づいたか。だけどな、これでいいんだよ。」
火乃花が少々非難がましい目でラルフに文句を言うが、ラルフは相変わらずニヤニヤしたままだ。
「ま、これが出来たんなら火乃花は次の授業に移っていいだろ。ついて来い。」
「まだ他にもあるのね。」
「もちろんだ。お前達には強くなってもらわなきゃ困るからな。」
先に歩き出したラルフを追って火乃花も歩き出す。
そんな2人の後ろでは、成功者が出た事でやる気を出したクラスの全員が鉄球を持ち上げようとチャレンジを始めていた。




