2-7-9.授業 基礎魔法
その日の14時。上位クラスの生徒達全員がグラウンドに集まっていた。ラルフが午前中の授業の終わりに遅刻したら裸で逆立ちと胸を揉むと言った言葉が効いたのか、遅刻欠席は共に無い。
各々が話をしたり、空を見上げたり、得意な魔法を見せ合ったりと自由に過ごしていると、ラルフがグラウンドに入ってきた。金髪デブチンは遠目から見てもすぐに見分けが付くので、生徒達はすぐにラルフの存在に気付いて静かになる。
そのラルフは何やら上機嫌である。午前中の座学の時とは全然違うテンションで話し出し…
「さて!授業だ。全員…集まってるか。ちょっと残念だが、まぁいいか。これから行うのは、全ての魔法の基礎になる無詠唱魔法だ。この魔法の制御能力が上がる事で、お前らが得意とする魔法の威力とかその他諸々のレベルが各段に上がるはずだ。」
そこまで話すとラルフは右手を軽く振る。すると、右手の動きに合わせて空中に巨大な鉄球が次々と現れては落ちてきた。
轟音にも等しい音がグラウンドに響いき、落下の衝撃で舞い上がった砂が辺りに立ち篭める。砂煙の中からラルフの声が響く。
「ごほっごほっ。空中に出す必要はなかったな。煙すぎる!よし、皆この鉄球を一回も落とさずに向こうのラインまで持ってこい。使っていいのは無詠唱魔法のみだ。落とした鉄球はスタート地点に自動転送されるから。あと、この鉄球は魔力以外じゃ動かせない様になってるからな。重量もかなりあるし、力でどうこう出来るもんじゃないからな。あと、ズルはできないぞ?ってか見逃さないからな。」
砂煙が晴れると、目の前には鉄球が1列に並んでいた。その大きさは軽く人の背丈を越えるほどである。
「なぁ遼、これってそんな簡単に動かせるのかな?めっちゃ重そうなんだけど。」
「んー。魔力で持ち上げるってどんな方法使えばいいんだろうね。魔力が関わってれば動くのかな?」
龍人と遼は目の前にある鉄球を見上げる。とてもじゃないが、力技でゴールラインまで運ぶのは出来そうにない。属性魔法を駆使すれば出来るだろうが、ここでは無詠唱魔法という制約がついている。つまり、無詠唱魔法を何かしらの方法で使う必要があるのだ。その方法がいまいち思いつかなくて動くに動けない龍人と遼。
「この鉄球を運ぶ方法は幾つかあるわね。まずは手のひらに魔力を集中させて鉄球をくっつける。その場合は無詠唱魔法で力補助のも同時に使わなきゃいけないのよね。流石にこの重さに耐えるだけの強化は難しいわ。そうすると…魔力を飛ばすしかないわね。」
いつの間にか2人のすぐ横に来ていた火乃花は自身の見解を2人に話す。やや面倒臭そうな顔をしているのは気のせいだろうか。
「魔力を飛ばすってさ、どうすればいいの?」
火乃花の言葉を聞いてもイマイチ訳が分からない遼は、小難しそうな顔をしながら火乃花に問い掛けた。