2-7-6.授業
出席を取り終えたラルフはクラスの生徒を見回すとニヤリと笑う。
「よし、全員揃ってんな。あ、一応自己紹介しとくか、俺はラルフ=ローゼス。このクラスの担任だ。よろしくな。さて、一番最初の授業は魔法学だ。お前らが嫌いになる授業の一つだから覚悟しとけよ。俺が学生の頃は魔法学は全部寝てたからな。教師にばれないように寝て、食ってのパラダイスだったよ。」
(なるほど、だからあんなに太ってんのか。)
ポッチャリ体型のラルフを見て龍人は納得する。
「あ、そうそう。授業は基本的に全て俺がするから。美人のおねーちゃんを期待してた男性諸君、残念だな。」
「おい!男性諸君とかいいながら俺だけを見ながら言うな!そんなに女好きじゃねーぞ!」
バルクが席から立ち上がり声を上げる。
「お?わりいわりい。女の子をいきなり持ち上げるから、触りたくてしょうがないんだと思ってたよ。ま、男ってのはそーゆーもんだ。恥ずかしがるなよ。な?そうだろ遼?」
いきなり話を振られた遼は驚き、思わず立ち上がってしまう。
「え、えっと、そうですね。そんな事もあると思います。」
クラスの女子達の非難がましい視線が遼に集中する。何故かレイラは顔を赤らめて下を向いていたり。
「え?ちょっと!なんか俺が悪者みたくなってない?」
クラスの女子からの冷たい目線に気づいた遼は慌てて周りを見渡す。
「ははは!ほんと、面白いわ。冷たい目線を向けてる女子、お前らも実はこっそりアダルトな本をみたり、変な事を想像してるっしょ?男も女もお互い様だぞ?」
途端にクラスの女子の雰囲気が凍り付く。それもそうだ、ラルフはこの教室にいる女子全員を変態扱いしたのだから。
クラス全員の冷たい視線を受けならがらも、ラルフは相変わらず余裕綽々な態度のままだ。
「よし、大分雰囲気が和んだところで授業といこうか」
今のこの状況を和んだとしてしまう辺りは、相当空気が読めないか、それともあえて空気を読んでいないのかのどちらか。もし前者だった場合、教師として失格レベルであるのは間違いない。
(この人、ただのエロ親父か?ホントに掴めないなぁ。)
龍人は教室の隅っこの席で呆れながらラルフを眺める。
クラス中を敵に回しそうな発言ばかりしているが、憎めないキャラである事に変わりは無い。そして、先程のバルクを瞬間的に移動させた一件から魔法に関する実力は計り知れないものがあると予想される。
まずは様子見。遼みたいに晒し者になりたくない龍人は、静かにしてラルフに目をつけられないようにしようと心に固く誓うのだった。




