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Colony  作者: Scherz
第一章 魔法街 始まる者達
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1.魔法学院への入学


 魔法街。

 その中に存在する4区の1つである南区。

 この南区を2つに分けるように敷かれている大通りを、1人の青年が歩いていた。

 細身の長身に短髪。そして女性ウケの良さそうな甘いマスクを持つ青年は、街の雑踏を止まることなく進んでいく。

 青年が着ているのは黒を基調とし、銀と赤のラインが入った服だ。魔法街に複数存在する魔法学院の一つ、街立魔法学院の制服である。

 彼は今年から街立魔法学院に入学する事になっており、今日が入学式なのだ。その魔法学院に向かっている最中なのである。

 さて、通りを進むにつれて同じ制服を着た人が増えてくる。ただし、普通の学校とはすこ違う風景というのも特徴の1つである。


(話には聞いていたけど、本当に年齢が関係ないんだな。)


 街立魔法学院の制服を着て歩いているのは、小学生にしか見えない子供から初老の年代まで様々だ。


(おじーちゃんまで居るんだ。制服を着てるってことは、生徒だよな…。流石に、おじーちゃんが隣の席だったら気まずいな。そんな年上と何を話したら良いのか分からないぞ。)


 入学初日…しかも入学前だというのに、入学のワクワク感が少しばかし減退するという悲しい事態に見舞われつつも、青年は街立魔法学院へと歩いていく。これで入学することをやめて家に帰る…なんて事をする程にひねくれてはいない。

 10分程歩くと、街並みに一際大きい建物が見えてきた。広大な敷地をもつそれは、この街の一角を担う魔法学院としての威厳を兼ね備えている。

 同じ制服を着た人の中には、田舎から都会に出てきた人のようにぽかぁんと口を開けて見上げる人もいたのだが、青年は立ち止まる事なく、街立魔法学院へと足を踏み入れた。


 その街立魔法学院の中は…お祭り騒ぎだった。

 美少女万歳!の文字が書かれた看板を掲げた若者と親父の集団が、


「美少女を愛するものよ集え!ロリの何が悪い!我々は純粋に、純粋に生きるのだ!」


 と、叫んでいたり。

 筋骨隆々の男たちが


「男は筋肉!筋肉があれば男も女も我々の虜になるのだ!マッスルだ!ハッスルだ!ぬぅぉおおあ!そこの君!俺の様に求められる肉体美を手に入れようじゃないか!」


 と、男を追いかけ回していたり。


(なんだこりゃ。魔法学院っていう威厳のカケラも感じられないなぁ。普通の学校じゃん。むしろ、変人が多い様な…。いや、魔法学院ってものに対して俺が持ってるイメージが間違ってるのか?)


 半ば呆れながら歩く青年。入学式の会場に着くと、そこはとてつもなく広いグラウンドであった。

 そのあまりの大きさに感心しながら見まわしていると、突如背後から殺気を感じ…反射的に魔法陣を展開する。青年の周りに透明の薄壁が現れ、飛び掛ってきた男を弾き飛ばした。

 その男…襲撃者は良く見知った人物であった。


「遼か!わりいわりい。いきなりなもんだから、ついやっちゃったわ。」


 青年は弾き飛ばされた男、藤崎遼の元へ歩み寄り手を差し伸べる。


「龍人~。相変わらずその魔法の展開速度は半端ないね。」


 遼は立ち上がって服の汚れをはたきながら、手を差し伸べる青年…高嶺龍人を見ながら苦笑いをする。


「少し脅かそうとしただけなのに、とんだ仕打ちだよ。」

「いつもいきなり攻撃されてるからね。ま、自業自得でしょ!」

「今回は素手だよ。」

「いやいや!いつも撃ってくるじゃん!しかも容赦なく。あんなんやられてたら、そりゃあしっかりと防御するっしょ。」


 いつも通りのやり取りをしながら、龍人と遼は会場のグラウンドへと進む。今の一瞬の攻防を見た在学生の何人かが小声で何かを言っているが、入学という雰囲気に少し浮かれ気味の2人はそんな周囲の状況には全く気付いていなかった。

 さて、入学式の会場となるグラウンドは人で溢れかえっていた。どこを見ても人、人、人。

 それだけこの学院が大きいという事が伺い知れる。


「新入生の皆さんはこちらにお進み下さい!そこ!新入生に紛れない!在校生は後ろだよ後ろ!え?混ざりたい?ダメだよダメ!新入生だけでする事に意味があるんだ!在校生は大人しくしてなさい!」


 誘導係の教員が大声で叫んでいる。


「あいつ声大きすぎないかな?流石に異常だよ。」

「あれは拡声魔法使ってるんだって。ほんと補助魔法に疎いよね。」


 遼に説明しながら、龍人は教員の言葉を反芻する。


(新入生だけでするのってなんだ?上級生が混ざりたがるって、そんなに楽しいのかな。)


 教員の言葉を分析している龍人に、遼が声をかける。


「あ、何か出てきたよ。」


 龍人が前を見ると、巨大な熊人形が仁王立ちをしていた。いやいや、何故熊人形だし。というツッコミが新入生達から無言の視線で送られるが、熊人形はそんな冷ややかな目線を受けても堂々とした態度で立っていた。


「やあ。新入生のみなさん。こんにちは。私はこの街立魔法学院校長である。この学校について、少し説明しよう。まず、校舎だが全部で4つに分かれておる。各学年に1校舎である。次に学年だが、1年生は来年になると2年生になる。それ以降の進学については、実力がある者しか上の学年には上がれないでの。また、進学の機会は基本日程はあるが厳密には決まっていないのである。規定の能力以上になった者のみが、進学出来るのである。まぁ、試験はあるんだがの。これは基本的にいつでも受ける事が出来るのである。詳しくはその時に聞くのじゃ。もう知ってるとは思うが、4年制である。次はクラスかの。クラスは3つに分かれておる。実力別の3クラスである。…こんなところかの。」


「話長くない?ってか今の内容、全部入学説明書に書いてあったよね。」

「な。周りも飽きてきてるね。しかも、校長先生の語尾が凄い気になる。ってか校長が熊人形ってどういう事だし。」


 校長の話に飽きた遼が龍人に話しかけ、龍人も返事を返す。実際、周りの新入生も飽きてヒソヒソ話を始めている。

 そんな新入生の様子を知ってか、知らずしてか…


「さて、話にも飽きたと思うから、皆の実力を見させてもらうのである。リング強制装着!」


 ババァん!と熊人形(校長)が両腕を上げるのと同時に、新入生達の首に金色のリングが現れた。


「そのリングは、諸君の体力を管理する物なのである。体力が1割を切った時点で、このグラウンドに転送されるようになっているのである。これから主らを試験用の島に転送するのである。期間は3日間。最後まで残れば1000ポイント。1人倒すと100ポイント。倒されると-500ポイント。期間終了後にポイントの高い者が上位クラスに入るのである。」


 いきなりの試験宣言。


「楽しそうだね。何も気にせずに暴れられそうじゃん。」


 龍人が楽しそうに呟く。


「1つだけ忠告なのである。皆の首についているリングだが、あくまでも一割を切った時点で転送なのである。死ぬ可能性もある。実際に過去に何人か死人が出ているのである。」


 命を失う可能性というワードを受けて、途端に会場内がざわめき立つ。前の方に座っている取り乱した若者が叫んだ。


「ふざけんな!なんでいきなり殺し合いをさせんだよ!俺は参加しねぇぞ!」


 同じような声が周りからも上がり始め、会場内はざわめきに包まれた。そんな新入生を眺めた熊人形の校長は、手を横に広げ肩を竦めながら一言。


「一応、言っておくのである。魔法を使う者は、命の大切さ、魔法の怖さ、それら全てを理解していなければならないのである。中途半端な覚悟しか持ち合わせていない者は、退学してもらって結構なのである。では、行ってらっしゃいなのである。」


 言っていることは間違っていないが…容赦のない切り捨て方だ。だが…突然伝えて突然その環境に放り込む。それもこの試験において重要な要素なのかもしれない。

 …なんて龍人が考えていると、途端にグラウンドが眩い光に包まれた。

 光は空へと立ち昇ってとある島へと向かう。そして、島の上空に到達すると、幾つもの光の筋に分かれて島に降り注いだ。


「転送完了なのである。さて、今年はどんな新入生がいるのか楽しみなのである。グッドラック新入生!」


 熊人形の姿をした校長はニヤリと笑い、その姿を消した。


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