7-2-3.夏合宿2日目
ボスッ
砂浜に着地する直前で何とか態勢を直して着地しようとした龍人だったが、急に横から加わった衝撃によって結局…顔面から地面に突っ込むことになった。
「ぺっぺっぺっ!?うぇ。砂が…。」
口に入った砂を吐き出しながら、衝撃の正体を確認する為に横を見ると…龍人と同じ様に顔を突っ込んだ男がいた。
その男はガバッと顔を抜くと、髪を整え始める。
「俺様とした事が、上から人が降ってくる事には気づかなかったぜ。」
低めの身長に癖毛、そして白い肌。見た事がない男だ。恐らく中位クラスか、下位クラスの生徒だろう。
その男は鏡を出して髪についた砂を払い、身だしなみを整え始める。
(ナルシスト…ナルシストだ。)
何故か声を掛けてはいけない気がして無言で観察する龍人。そして、それに気づく男。
「お、そうだった。お前は何で上から降ってきた!?」
話し方もおかしい。龍人は引き攣った笑いが顔に出るのを全力で抑え、平静を装う。
「上に仮住居があるから、跳び下りたんだけど。」
「なるほど。それで俺様に当たったんだな。」
(どっちかっていうと、当たったのはこいつな気がするんだけど…。まぁいいか。)
「申し訳なくて言葉が出てこないんだな?まぁいい。許してやる!俺の名は…。」
「あ!クラウン=ボム!久々に見たなー。何してんの?」
少し離れた所に降り立った遼が近づいて来る。
(あら。遼の知り合いか?)
覚えているだろうか。クラス分け試験で、不意打ちで遼の武器を吹き飛ばし、ひたすらに爆弾で攻め続け、火乃花にパパっと負けかけた男。クラウン=ボムを。
「ぬぬぅ。俺様の名乗りを邪魔するな!しかもお前は…名前は知らんが、クラス分け試験で俺様に負けた男だな!?もう一度言う!俺様に負けた男だな!?」
自分に負けた所をヤケに強調するクラウン。
「しつこいなぁ。正々堂々と戦ったら絶対に負けないし。あと、俺の名前は藤崎遼だから。」
「お前の名前なんか知らん!おい、遼!お前の方が強いとは聞き捨てならん!…今からやるか?!あと、俺様にぶつかったお前!名前は何だ!」
騒がしくて煩くて、面倒くさいとはこういう男の事だろう。歩く公害とでも名付けるか?
名前を言うのがとても面倒臭いが、答えないと更に面倒臭くなりそうなので、嫌々ながらも龍人は答えることにした。
 




