6-3-10.追跡
…走馬燈。
「龍人!ごはんよー!まだ…やってるの!?程々にしなさいよー!」
「やってないし!今行くよ!」
(なんだ?これは…。知らない風景だ…。)
そこは、四角い部屋であった。勉強机とベッドがある比較的簡素とした部屋。ベッドの上に見た事があるような物が上に置いてあった。
勉強机の椅子に座っていた龍人は両手を上に上げて伸びをすると、立ち上がる。
「ったく、いつでもやってるって思われてんよな。ま…やろうとしてたのは秘密秘密。」
ベッドの上の何かを見た龍人は、「やりたかった」とブツブツ言いながら部屋を出た。
…走馬燈。
そこは何処かの洞窟だろうか。目の前には大量のモンスター。そして隣に立つのは遼だ。後ろには数人の仲間が居るが、皆負傷をしていて状況は芳しく無い。
(これも知らない。俺の…俺の記憶なのか?)
龍人達は追い詰められているのだろうか。モンスターがジリジリと距離を詰めて来る。
龍人と遼は迎え撃つべく構える。モンスターの数、まともに戦える仲間の数、普通に考えれば勝てるはずの無い戦況だが…負ける気は一切しなかった。龍人は後ろをチラリと見る。既に意識を失っている仲間もいる。
(なんだ…俺は死んだのか?なんで知らない風景を見て、俺がそこにいるんだ…。)
「…い!おい!大丈夫か!?おい!」
呼び掛ける声によって龍人の意識は現実へ引き戻される。目を開くと、そこには見知らぬ人物がいた。
短髪の黒髪。そして、ちょっとポチャな体型の男だ。下唇が厚い。少し肌黒。…一言で言えば、可愛いゴリラ?
「おい!ぼーっとしないで!動ける!?」
良くみると高速で回転する鉄の円盤を、地面から生えた何かで受け止めている。現実で自分が置かれていた絶体絶命の状況を思い出した龍人。同時に右脚と左肩の痛みが蘇ってくる。
「っつ。動けないかな…。ちっとばかしキツイわ。」
「わかった!少し痛むけど我慢して!」
男の言葉が終わると同時に、龍人の下から何かが現れる。それは龍人を優しく持ち上げると、少し離れた場所まで運んだ。
(これは…蔓か?)
蔓は龍人を降ろすと消える。
「あ、大丈夫?とりあえず、大人しくしてた方がいいよ。何かあったらおれが守るからさぁ。」
そこには別の人物がいた。
 
 




