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Colony  作者: Scherz
第二章 魔法街 闇の鱗片
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6-3-6.追跡

「…待て。」


 フードの人物がヤンキー男を制止する。今にも襲いかかりそうな雰囲気だった男は、舌打ちをすると動きを止めた。ただし、目線は真っ直ぐに龍人を見据え…少しの動きも見逃さない構えだ。

 フードの人物が龍人へ問いかける。


「お前、隠しても無駄だぞ?建物の陰で見ていたのは知っている。袋の中身も見たよな?」


 その言葉に動揺したのは、龍人ではなくヤンキー風な男だった。


「なっ!?あの中身を見られたんすか!?あっしがどれだけ努力してここまで持って来たと思ってるんすか!?」

「五月蝿い。そもそも、お前が素直に渡さないからこの結果になったんだ。」


 口論を始める2人。間に挟まれた龍人は周囲の状況を可能な限り確認していく。僅かな隙でいいから見つけ出す必要があった。


(上手くいけば逃げ出せるか?)


「あんたは、あんたは!あっしに家族がいる事を逆手に取って…こんな事に巻き込んだんやろが!あの計画が全て、全てあっしの人生を狂わしたんや!」


(あの計画?クリスタルと何か関係があるのか…?)


 ヤンキー男が叫ぶと同時にフードの人物の姿が消え、鈍い音が響いた。


 ザシュ


「が…は…。」


 龍人が視線を向けると、ヤンキー男の胸から黒い刃の様なものが飛び出していた。ピクピクと痙攣する男は胸から飛び出す刃を握ろうと腕を動かすが、もう1つの刃が胸から突き出てきた事で動きを止めてしまう。


「お前、喋りすぎだ。死んで詫びろ。」

「あ、あ…ま…だ…。」

「ふん。お前の人生なんか知った事か。」


ザシュ。ザシュ。ザシュ。


 フードの人物は男を刺し続ける。数度刺された所で男の体から力が抜ける。腕が垂れ、跪き、仰向けにゆっくりと倒れていった。生気を失いぽっかりと開かれた眼が龍人へと向けられる。

 命が灯らない空白の眼に見つめられた龍人の背中を戦慄の感覚が駆け巡る。

 冷酷。そして無慈悲。蟻の体を千切るかの様に命を奪う事ができる精神。フードの人物の行動に、龍人はただ呆然として見る事しか出来なかった。

 男が倒れて用済みになった所で、フードの人物がゆっくりと龍人へ視線を向けた。


「お前も知り過ぎたな。余計な事に首を突っ込んだことを後悔して死ね。」


 フードの人物はゆっくりと歩み寄る。


「あ…いや、待て!おい!」


 龍人の言葉が聞こえていないのか、聞いていないのか。歩みが止まることは無い。


(落ち着け、落ち着け、落ち着け、落ち着け!このままじゃ殺される。落ち着け。頭を働かせろ。考えろ、動け!)


 目の前で人が死んだ…殺されたという事実。それによって麻痺していた思考回路が自身の危機でようやく動き始める。

 ゆっくりと確実に近付いてくるフードの人物は龍人に向けて右手を翳した。


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