6-3-3.追跡
遼達3人と別れた龍人は、とある雑貨屋の前に到着した。その店は今日1日中央区を散策している中で、何度か見かけた不審な人物が今しがた居た場所だ。
鍵を落としたと言って転送魔法陣から飛び出たのは只の芝居。南区へ帰る直前に、不審な人物をこの雑貨店の前で再度見かけたのだが、その男は前に見かけた時は持っていなかった袋を持っていて、辺りを警戒しているかのように視線を周りへと巡らせると、路地裏へ消えていった。
そんな怪しい人物を見つけて、見過ごす訳にはいかない…というか、見過ごしたくなかった野次馬根性全開の龍人は、後を追ってみる事にしたのだ。良い意味でも悪い意味でも、好奇心が旺盛である。
龍人はすぐに男が消えた雑貨店横の路地裏を覗くが、当然の如く男の姿は見えない。
空中から探すか、路地裏を進むかの2択。少し考えた龍人は路地裏を進む事を選択した。
(空中から探すと目立つし魔力の消費も多いし、相手さんに気づかれるかも知れないしな。)
行動を決めた後の龍人の動きは早い。路地裏を駆けて行き、道が幾つにも別れていても迷う事なく進んで行く。一応補足しておくが、分かれ道の選択は全て勘である。とは言っても、闇雲に進んでいる訳ではない。
怪しい袋を持っていた事。周りを見渡し路地裏へ消えた事。これらから推察するに袋の隠し場所がある。もしくは、袋を誰かに引き渡すと考える事ができる。
こういった点から人気が無い方向に向かったのだろうと予想したのだ。程なくして、龍人の予想は的中する事となる。
バンバン裏路地を突き進んだ龍人は中央区の外れまで来ていた。辺りに人気は少なく、いかにも…という雰囲気を醸し出している。
路地を横切ろうとした時に囁くような会話が耳に飛び込んで来た。
 
 




