6-1-22.お買い物
遼、火乃花、レイラの3人が恐る恐る店内のドアを開けると、スロージャズが耳に入ってきた。大人な雰囲気の店である。
そして、嫌な想像しか出来なかった店内の様子は…至って普通だ。先程聞こえた龍人らしい叫び声が空耳だったのでは?と錯覚してしまいそうになる位に。
入り口の所から店内を見回して観察した遼は1つの事実に気が付く。
(やけに女性の客が多いな…。いや、逆かな。男の客が少ない方が合ってるかも。)
3人は店内をゆっくりと奥へ進んでいく。クリスタルは魔法協会の許可が降りた店でしか買う事が出来ない。そして、この店が街立魔法学院から補助金が出る唯一の店である。そんな貴重な商品が陳列棚に並んでいる訳は無く、カウンターまで行く必要があるのだ。そのカウンターは店の1番奥にあった。
因みにここまでで、龍人の姿を見つける事は出来ていない。店に入ったのは間違いが無いので、どこかに居るはずなのだが。
しかし、本当に奇妙である。女性客は普通に笑いながらショッピングを楽しんでいる。2、3人見つけた男は、何故か疲れた様な顔をしながら商品を選んでいたり、連れの女性に慰められていたり。
カウンターに近づくにつれ、遼の中に嫌な予感が渦巻いていく。
程なくして、3人はカウンターに到着するが誰も居なかった。
「あのーすいません。」
遼がカウンターの奥に声を掛ける。
「なぁに?」
すると、カウンターの下からいきなり人が現れた。遼、レイラはその人物を見て動きを止めた。火乃花は「成る程」と左手の手の平に右手の拳をポンっとした。
そこに居たのは…オカマだった。




