6-1-21.お買い物
6-1-21.お買い物
30分程度色々な所を歩き回った頃だろうか。そろそろ目的の店が見つかっても良いのではないかと思い始めた時、変化は急に訪れた。
「………!」
「あれ?なんか悲鳴が…」
1番最初に気付いたのは遼だった。それは道の向こう側から何の前触れもなく。
「うぎゃぁぁぁあ!!」
「にげろぉお!」
「もう、もう俺はお嫁に行けない…お母さーん!」
男子10人程の集団が叫び、泣きながら通り過ぎて行った。
「…なぁ、今のなんだと思う?」
「何だろうね…。スゴイ嫌な予感がする。」
ビビる男子2人。火乃花とレイラも動きを止めたまま、男子集団が現れた先を見ていた。
「ねえ、レイラ。あの男達が現れたのって…あの店よね?」
「うん。そうだと思うんだけど…。私、ちょっと行きたくないな。」
その視線の先にあった店の名前は…MagicShop男女男女。そう、龍人達4人が探していた店である。
4人は先に進むのを躊躇ってしまう。クリスタルを買う為には進まなければならない。しかし、男子達のあの悲鳴…。あの店の中には何が待っているのだろうか。
(強盗でも入ったか?にしては、周りの店の反応が普通だし、お嫁に行けないって…。)
「だぁぁ!分からん!俺は行く!」
龍人は意を決し、1人でMagicShop男女男女へ足を踏み入れた。遼、火乃花、レイラは突然歩き出した龍人を驚きの目で見るが誰も止めなかった。こういう時に身を挺して状況把握に努める役というのもかなり重要である。意外に薄情だったりする3人。まぁ、あんな悲鳴を撒き散らしながら走り去る男達を見れば、当然の反応かもしれないが。ともかく、無言で龍人を見送ったのだった。
数分後…。
「うわぁぁ!やめろ!やめてくれ!それだけは!うぎゃぁぁ!……………………。」
龍人の叫び声が響き…続くのは沈黙。道を通るお爺さん2人。
「ほっほっほ。今日は豊作みたいじゃの。」
「新入生が中央区に来る時期じゃからのぉ。今年もいい悲鳴が響いとるわ。ひぇっひぇっ。」
ほのぼのと笑いながらお爺さんは通り過ぎて行った。顔を見合わせる3人。
「どうする?龍人が心配だし入ってみよっか。」
「そうね。さすがにこのまま放って置くのも出来ないし。」
「何が起きるか分からないから、気をつけようね…!」
3人は、敵地に潜入したスパイの様に気を張り巡らせながら、MagicShop男女男女のドアを開けた。




