6-1-12.お買い物
その人物は必死に走る龍人を追いかけ、並走すると声を掛けた。
「ちょっと、龍人君。いくらなんでも急ぎすぎじゃない?」
火乃花である。龍人は火乃花の顔を見ると、走っている事で上下するものに気付き…思わず目線が下に向きかけるが、昨日の教室での出来事を思い出し我慢する。こんな所で再び火乃花を怒らせる訳にはいかない。
「だってさ、もう待ち合わせの時間じゃん!遅刻はやだし!」
「変なトコ律儀なのね。ま、一緒に付き合ったげるわ。1人で爆走するよりは恥ずかしくないでしょ。」
「いやいや!火乃花も遅刻じゃんか!少しは急げって。」
「だから一緒に走ってるじゃないの!ま、さっきまでは歩いてたけどね。あ、そうだ。龍人君、折角だし勝負しない?」
「え、なんの勝負?」
「どっちが先に到着するか!悪いけど、負けないわよ!」
火乃花はニコッと笑うと、龍人が承諾する前に加速した。
「なんで勝負になってるんだか。…ま、いっか。こっちこそ負けないし!」
勝負の提案に乗る事にした龍人は、2M程度先を走る火乃花を追い抜くためにスピードを上げる。身体能力強化を施して一気に…。
「あ!龍人君!魔法はなしだからね!」
げっ。と龍人。
「なんでだし!」
「ふふん。じゃ、先に行くわね。」
「いや!答えろし!」
駆けっこレースのスタートである。
 




