5-4-15.対人戦トーナメント決勝
炎剣を出してから動きを止めてしまった火乃花を不審に思いながらも、スイは刀を杖代わりにして立ち上がる。攻撃を仕掛けるには魔力が減りすぎていて、いつ倒れてもおかしくない状況だが…ここで攻撃をしなければ勝つ事は出来ない。
スイは最後の力を振り絞って火乃花へ斬りかかった。
動きを止めて思考の波に呑まれてしまっていた火乃花は、スイが動き始めて少しした所でやっと気付く。その時には目前にスイが迫っていた。
どう考えても対応が難しいタイミング。しかし、油断をしていたからといってスイが待ってくれる訳もなく…白銀の線が火乃花に襲いかかった。
そして訪れたのは…沈黙。
会場内にいる全ての人が動きを止め、言葉を発するのを忘れてリング上の2人を見つめていた。
火乃花の目の前でスイは膝から崩れ落ちた。彼を襲ったのは…今迄に感じた事が無い激痛だった。全身の神経がそこに集まっている程の痛みがスイを襲う。
「うぐっ…。がっ…。」
スイは大衆の前で自身の股を押さえ、ピクピクと痙攣する。
…無音。会場は未だに無音が支配している。聞こえるのはスイの口から漏れる苦痛の呻き声のみ。見ているだけでも痛くなりそうな光景に男は震え、女は目を覆う。
「あ、えっと、火乃花の勝利!…だ!皆拍手!」
まさかの結末に戸惑ったラルフは、歯切れの悪い試合終了のアナウンスしかする事が出来なかった。




