2-6-5.クラス発表
龍人と遼が2人の火乃花が指差した方向を見ると、1人の男性が校舎の方から歩いて来た。
短い金髪がとても目立つ男だ。
因みに…金髪だからといってイケメンという訳ではない。顔は一般的だし、背は平均的な男性のそれ位。そして、極め付けはデブちんである。
外見は金髪デブという大分調子に乗った感じなのだが、纏っている雰囲気は誰もが異質と感じるレベルのものだった。
柔らかい雰囲気が主ではあるが、狼を思わせる鋭い雰囲気も感じさせる。そして、何よりもオーラというべきか…その男が相当な実力を持っている事を見た人々は感じ取っていた。
「遼…あいつ強いぞ。」
「うん。俺たちより強そうだね。」
龍人達の視線につられて、その男が現れた事に気づいた人々は段々と静かになっていく。ついさっきまでざわついていた校門前の広場はヒソヒソ声すら聞こえない静寂に包まれた。
部活への勧誘を行っていた在学院生達達ですらも静まるのだ。それ相応の教師であることが窺える。
広場の中央まで進んだ金髪デブ男は自分を見ている学生達を見まわし、ニヤリと笑う。
「よお!学生のみんな!これから新入生のクラスを発表すんぞ!そこの掲示板に今からクラスを発表するから、良く見ておけよー!」
案外フランクな話し方である(いや、金髪という事を考えれば妥当か?)。
いきなりいきなりクラス発表という本題に、生徒達はざわめきながらも掲示板を注視する。
そして、金髪デブ男の「ほれっ!」というなんとも言えない掛け声で、新入生がどのクラスに配属されるかを示す文字が浮かび上がった。
[新入生クラス分け試験結果]
[上位クラス以下40名]
…
…
高嶺龍人
…
藤崎遼
霧崎火乃花
[中位クラス以下100名]
…
…
…
…
[下位クラス以下200名]
…
…
…
…
ズラーっと並ぶ文字の中で、上位クラスの欄に自分達の名前があることを確認した龍人と遼は拳を打ち合わせた。
「やったね!」
「おう!エリートの道への第一歩だ!ってま、まぁエリートを目指してるわけじゃないけどな!」
辺りは龍人達と同じように歓声を上げる者や、落胆の声を出す者、悔しいのか嬉しいのか涙を流す者など…反応は様々だ。
新入生達の反応を眺めていた金髪デブ男は、少しすると再び話し始めた。
「さーて!今日は解散だ!皆さっさと帰るように!」
そう告げた金髪デブ男は魔法転移を使ったのか、一瞬で姿を消した。
周りはまだまだ盛り上がっているが、龍人と遼はこれ以上この場にとどまるつもりは無かった。
今はクラス発表すぐ後という事もあり静かになっているが、部活に勧誘しようと上級生が目を光らせているのだ。
下手をすれば変な部活に強制入部されかねない。そうなる前にこの場を去るのが得策と言えよう。
「よし!龍人帰ろうよ。」
「そうするかー。俺は上位クラスに入れて満足だわ。帰って寝る。」
「寝るって…龍人らしいね。火乃花はどうするの?」
龍人の寝る宣言に苦笑しながらも、遼は火乃花が難しい顔をして掲示板を眺めている事に気付き、声をかける。
「ん?そうね。私も今日は帰るわ。」
「お、じゃあ一緒に帰る?」
「残念だけど、これから少し用事があるの。先に行くわね。」
そう言うと火乃花は難しい顔をしたままスタスタと校門から出て行ってしまう。ついさっきまでのフレンドリーちっくな雰囲気がガラリと変わっていたのには何か理由があるのだろう。だが、本人が行ってしまった以上は確認する方法も無い。
龍人と遼は目を合わせて首を傾げる。
「まぁ、あれだな。何か思うとこがあったんだろ。知り合いが上位クラスに入って無かったとか、そんな感じじゃない?」
「んー、そうかもね。余りあれこれ推測してもしょうがないし…行こっか。」
「んだな。」
こうして、龍人と遼も街立魔法学院を出て帰路に着いたのだった。