5-4-5.対人戦トーナメント
口から血を垂らし、全身に痛みが走って満足に動くことが出来ないスイは、ギチギチと痛む身体を気合いで動かして立ち上がる。その少し離れた所に火乃花の姿が現れた。スイとの打ち合いに競り勝ったことで、余裕の表情が浮かんでいる。
「どうかしら?降参するのもありだと思うわよ。」
「ふん。そんな惨めな真似が出来るか。」
かなり辛い状況なはずだが、追い込まれても無表情を貫くようだ。スイは手の甲で口元を拭いながら立ち上がる。そして、刀を地面へと突き刺した。
「俺も全力でいかせてもらう。」
「流石ね。武士っぽいだけあって、根性あるわね。ちょっと楽しくなって来たかな。」
余裕の表情を浮かべているが、火乃花は油断する事なく再び剣を構える。
スイは刀の柄を両手で握り締めると魔力を流し込む。すると…辺りに氷の板が出現し、それらは様々な角度で空中に停滞しる。数枚なら良いのだが、スイが出現させたのは30枚は下らない。順々に出現させたのでは無く…一気に出現させたことから、スイがまだまだ戦える事が窺える。
「凄いわね…。これだけの氷の板を出すなんて。ってまだ増えるの?」
氷の板はどんどん出現していき、光を乱反射してキラキラと輝く。更には鏡のように周囲の光景を映し出すため、もはや鏡の迷宮にいるかのようである。
そして…火乃花はスイの姿を見失ってしまっていた。




