5-3-4.対人戦トーナメント準決勝
龍人の前に燦然と輝く光球から数多の光弾が放たれる。それは、外側へ曲線を描くようにして火乃花の下へ飛翔し、着弾した。着弾地点は光属性の小規模爆発が連続して引き起こされている。
だが、避ける事に全力を注いだ火乃花は既に着弾地点から移動していた。属性【幻】で分身を複数創り出し、龍人の目を欺きながら高速で回避を続ける。
(くそっ。ここまで制御に集中してたら、分身を見分けるのは難しいな。)
龍人はひたすら光弾を乱射する。魔力の探知結界を広げて火乃花の正確な位置を把握したいのだが、気を抜けば光球が暴発しそうな状況では他の魔法を使う事が出来なかった。
光弾を避け続ける火乃花は、龍人の隙を探し続けていた。
(弾幕に隙間がないわ!こう乱射されたら、規則性も無いし…)
不意に攻撃が止む。反撃のチャンス…である。
「やったわ!」
火乃花は攻撃が止んだ事に不信感を抱きながらも、龍人の真後ろに移動して両手に炎を集中させる。
だが、攻撃が不意に止まった理由を考えるべきだったと言えよう。
「やべっ。」
龍人の声と同時に光球が爆ぜた。それは荒れ狂う様に周囲へとエネルギーを吐き出す。龍人と火乃花は、そのエネルギーをモロに受け、吹き飛ばされてしまった、
2人は地面に降り立つ。間近で光球の暴走したエネルギーを受けた割に、互いにダメージは殆ど無いようだ。
ただ、龍人の戦い方が気に喰わない火乃花は、腕を組んで龍人を睨みつける。
「ちょっと!自爆技なんて、らしくないんじゃないの!?正々堂々と戦いなさいよ!」
「ん?あぁわり!制御しきれなくなって、爆発しちまった!ははっ。」
あっけらかんと笑う龍人に怒りが込み上げる火乃花は、言葉の代わりに火球を龍人に飛ばす。
ボン!
顔面に直撃した龍人はひっくり返った。顔を抑えながら涙目で抗議する。
「ちょい!今は攻撃しないとこじゃない?」
火乃花はジト目で龍人を見る。彼女がお怒りモードなのは、誰の目から見ても明らかだった。
「龍人…真面目に戦いなさいよ!馬鹿らしくなってくるわ。ほんとに。」
「いや、待て待て。」
龍人は火乃花に手の平を向けた。




