第30話 Let me have a dream -Margaret-
更新が遅れましてすみませんっ
ゆるいくせっ毛のフワフワの金髪。いつも触りたくなるの。
それに幼子のような無邪気な瞳。あの目に見つめられると、恥ずかしくてたまらない。
一目ぼれって、本当にあるのね
「ねえ夏になったらさ、君といっしょに羽化が見たいな」
「うか?」
「そう、チョウが成虫になる瞬間。絶対に君も感動するから」
今日もいつもの森に出かけると、ちょっと興奮ぎみにキラキラとした顔で彼はそう言ってきた。
「フランシス様それは……」
「“様”はなしだって前に言ったよね?」
やさしく怒られて、私は「じゃあフランシス……」と口にしてみた。くすぐったくて仕方がないけれど、なんだかそれだけで急に距離が近づいたような気がするわ。
でもね、私分かっているの。
彼がそんなことを言ってくれるのは、私のことを大切な“友達”として見ているからだって。私は一生、その“友達”の範囲を超えることはないのかしら。そう考える事自体、身の程知らずなのでしょうけれど。
思えば、2人で会うのはいつもこの森。最初はそれだけで心が躍ったわ。
フランシスが楽しそうにチョウの話をするのを聞くのは私も嬉しいけれど、でも……それだけじゃ満足できない自分がいるの。私、いつからこんなに欲張りになったのかしら―――。
◇
屋敷に戻ると、兄のウォルターが私を待ち構えていた。
「伯爵のご子息と会っていたそうだな」
「ええ、まあ……」
「これからも良好な関係を築くように。次男坊といえど、もし結婚して伯爵家と姻戚関係になれば今の生活も少しは楽になるかもしれん」
「お兄様!」
私は兄の狡猾な思惑に羞恥心を覚えた。ひどい言い草だわ。
それにそんな望み、きっと叶うはずないのに……。
「うちは貴族といえど正真正銘の貧乏貴族。お前にはうちの未来がかかってるんだ」
「……そんな」
母は、私を産んですぐに亡くなり、父も数年前に病でこの世を去った。女性と賭け事しか頭にないようなろくでなしの父が残したのは借金だけ。
毎日、穀物や野菜中心の質素な食事に、衣服は全て母のお下がり。贅沢なんてできない我が家の中は、ときどき水音が聞こえるほどに寂しく感じられる。
そんな火の車の家をどうにか建て直そうと必死な兄の気持ちに、私だって応えたい。だけど私にできる事は、愛よりお金のために結婚することだけなの?
私はフランシスが好き。
叶わなくても、まだしばらく夢をみさせて。
もしも、そんな残酷な結婚を強いられるのなら、その時まで……。




