表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DARLING !  作者: non
27/38

第26話 200 pages love letter -April & Edward-



 自分らしく、エドワード様への想いを伝える。

 ジュリアンからの手紙を機にそう意思を固めたわたくしでしたが、一体どうしたものかと再び行き詰まっていました。



 今日の朝食のテーブルにはシンプルな花瓶に挿されたラベンダーの花が。季節はすっかり初夏に変わろうとしています。


 そんな爽やかな朝にも、果物をつまみながらついわたくしは考え込んでしまいます。


 

 わたくしの趣味といえば……たまに詩を書いたり、ピアノも少々、いちおう料理もかしら? ああ、でもこんなものではこの気持ちを伝えきることは不可能だわ。わたくしってなんて才能のない女なのかしら……。



「幸せが逃げていくよ」

 思わずため息を漏らすと、新聞を広げていたお父様がそんなわたくしに言いました。


「それは分かっていますが、わたくしの才能のなさが嘆かわしいのです」

「才能? お前は本をよく読んでいるし、何より想像力豊かだ。意外と文才があるかもしれない」

「……え?」


 お父様はきっと思いつきで言っただけなのでしょう。

 でもこの一言で、わたくしはすぐに「これだ!」と眼が覚めたような気分になりました。


 文才があるかどうかは二の次。ただわたくしは小説が大好き。とびきりロマンチックな小説が。その気持ちだけがわたくしをつき動かしたのです。







 大量の紙をすぐさま用意させ、わたくしはそれからしばらくの間机に張り付いたままでした。

 

 湧水のごとく次から次へと言葉が溢れ、走らせる筆が追い付かないほど。頭の中の想像は止まる事を知らず、憑りつかれたようにただひたすらに物語を紡いでいきました。




 現実に舞い戻ったとき、部屋にはすっかり夕焼けの光が。


 まだ途中の原稿を眺めると、それはまるで自分の子供のように愛おしく思えます。だってここには、わたくしのエドワード様への愛がつまっているのですもの。


 たとえ、エドワード様がわたくしを愛してくれなくとも、この物語を書き終えることがわたくしの恋に一つの区切りをもたらすのです。




 部屋に缶詰め状態のまま原稿に没頭したわたくしは、それから数日後ついにそれを書き上げました。

 

 たったひとり、あの方に読んでほしかった。この物語に綴った想いを、あの方に捧げます―――。







                 ◇







 エイプリルと会わなくなって、どれほど経ったのだろう。


 それでも日常は変わらない。仕事をして、たまに友人と酒を飲み、休みの日には馬に乗る。


 だけれど、こんなにも心はからっぽだった。となりに無邪気に微笑む彼女がいないだけで。

 距離を置こうとしたのは自分のくせに、この矛盾した葛藤が私を苦しめていた。



 そうして悶々とした日々をしばらく過ごしているときだった。私宛に小包が届いた。



 荷を解くと、中からは厚みのある紙の束が出てきた。

 

 その表紙には、“サラと伯爵”というタイトルらしきものと、その下には著者の名が。

 

 私がよく知っている、ある女性の名。




 早速ページを捲ると、冒頭、こんな前書きが記されていた。


『この小説を、わたくしの愛する“E”に捧げる』。

 

 その文字を私はゆっくりと指先でなぞる。



 それは、とある小説家から送られてきた200ページのラブレターだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ