第23話 If I open the door -Edward-
全てがハッピーエンドのジュリアン・ハワードの小説なんてうんざりだ。
そうやっていつも冷めた目でいるようになったのは、あの日の出来事があってからだった。
家がとなり同士の幼馴染。
小さい頃からいつも一緒で、よく手をつないで庭を歩きながら、なぞなぞを出し合ったっけ。
答えられないと私が彼女をからかって、彼女は腰に手をあててほっぺたを膨らましたんだ。その姿がとても愛らしかった。
私はキャロルが好きだった。
初恋だったんだ。
女々しいと思われたって良い。結果的に彼女がどんな非情な事をしたかなんてどうでも良い。
私にとって一生忘れられない恋だったんだ。
まどろみから覚めると、そこは長椅子の上だった。
さっきまで読んでいた本が床に落ちている。
ずいぶん、懐かしい夢をみたな。
私は横たわったまま、窓から見える空を仰いだ。
昔は、よくキャロルの夢を見てうなされていたっけ。
でも今は不思議と、嫌な気分はしなかった。むしろ、ああ、そんなこともあったなと彼女との思い出を冷静に眺めている自分がいる。
目を逸らしたくなるような記憶を、こうして直視できるものに塗り替えてくれたのは、きっとエイプリルのおかげだ。
後先なんて考えず、いつも大胆な行動で私を驚かせる伯爵家のお嬢様。
いつの間にか、私に前を向く余裕をくれた。
彼女は最初から変な娘だった。でも同時に、素晴らしい女性だった。
そんな女性に、私はひどい仕打ちをしているのかもしれない。
エイプリルの愛を受け止められるか分からない、そんな迷いから、私は彼女との距離を空けることにした。
そのことにエイプリルが気付いて、ひどく動揺した瞳で寂しそうに俯いて、そしてこっそり目元を拭っていたのを私は知っていた。一体、どれほど辛い思いをさせたのだろう。
彼女を傷つけたくない、そう思ってした事が、結局彼女を傷つけてしまった。
私は間違っていたのだろうか。
もしも扉を叩く彼女のノックに応えたら、その先には何が待ち受けているんだろう。




