第22話 I can't reach you -April-
夜、ベッドの中で目を瞑ると、いつもあの方の姿を思い浮かべてしまいます。
美しく甘い目元、眉の形、髪の毛の一筋まで、想像するだけでこんなにも胸が高鳴るのは貴方にだけ。
それなのに瞼を開けた途端、目の前に広がっているのは虚しい現実。
どんなにわたくしが手をのばしても、貴方が応えてくれることは永遠にないのでしょうか?
「レイリー卿、ついにご結婚ですって」
「お相手は成り上がりの商家の娘だとか」
「二十も年下なんですってよ」
「まあ~っ」
お母様が主催したお茶会。
菓子と紅茶を手に、淑女たちの会話は止まりません。
サロンに集った若い娘たちといえば、もっぱら恋の噂や殿方の値踏み。それだけで話題には事欠きません。
「ふう……」
しかし今日のわたくしはその輪の外で、何度目かのため息を漏らしました。
今のわたくしはそれどころではないのです。
「ところで、侯爵家のエドワード様の噂、知っております?」
何気なく聞こえてきた恋する人の名前。わたくしの耳がピクリと反応します。
これまで浮いた話ひとつ聞いたことがなかっただけにこれは気になります!
「実はね、1年ほど前に婚約を交わしていたんですって」
―――え……婚約……?
わたくしは自分の耳を疑いました。
「それは本当ですの?」
「ええ、確かな情報ですわ。お相手は幼馴染だとか」
「はあ、ついにエドワード様も結婚……残念ですわ~」
わたくしは血の気が引く思いでした。
手のひらが汗で滲んで、目頭が熱くなってきます。
エドワード様が婚約していた。
そんなの所詮は噂だと、なぜ笑い飛ばすことができなかったのでしょう。
なぜなら、もしそれが真であるなら、色々なことに説明がつくからです。
どうして最近、エドワード様がわたくしをあまり見なくなったのかとか―――。
馬鹿みたいですね。
もし婚約者の方がいらっしゃるなら、わたくしはただの迷惑な娘。
勝手にエドワード様に付きまとったりなんかして……。でもエドワード様はお優しいから、そんなわたくしとお友達にまでなってくださった。
エドワード様を愛する気持ちが、結局エドワード様を困らせてしまっていたのかもしれない。
わたくしは、これからどうすれば良いの……?
この恋を今更あきらめるなんて、できるのでしょうか。




