第21話 Guarantee to love her -Edward-
いつかは結婚しなければならない。
でも当分は、恋なんか無理だ。
そうして固く閉ざしていた扉を、ある女性がトントンとしつこくノックしてくる。
あまりのしつこさに、諦めてちょっとだけ扉を開けると、その隙間から彼女は惜しみない愛を持って内側に入ろうとしてきた。
それに抵抗しようとする自分と、どこかで嬉しがっている自分がいる。
このまま扉を開けたままにしておくのか、閉めるべきなのか、私は情けないことに途方に暮れていた。
「ミス・ダーリングは素直で可愛らしいお嬢さんだな」
「ええ、エドワードの結婚相手として申し分ないです」
競馬場から屋敷に戻ると、父と母は微笑を浮かべながらそんなことを言った。さもエイプリルが私の婚約者であるような口ぶりだ。
「父上、母上、以前も話したように、私はまだ結婚するつもりはありませんよ」
「じゃあミス・ダーリングとはどのような関係なのだ?」
「それは……友人、です」
語尾を濁すような言い方しかできない。
「しかしお前、なぜそうまで頑ななのだ」父上の眉間に皺が刻まれる。
「もしやお前、まだキャロル・エヴァンスのことを……」
「……」
久しぶりに耳にした、彼女の名前。
忘れたくても、たぶん一生忘れられないだろう。
たくさんの幸せと、たくさんの苦しみを私に与えた女性。
「あの事は、確かにお前にとって残酷な仕打ちだった。しかし、いつまでも過去に囚われていてはならん」
「それは分かっています。分かっているんです……」
それ以上は言葉にならなくて、私は父と母に背を向けた。
エイプリルといっしょにいることが、いつの間にか心地良くなっていた。彼女といる間はキャロルのことを忘れられる。
でもこの先、彼女を愛するという保証はどこにもない。
だったらいっそのこと、エイプリルとの友人関係を解消すべきではないだろうか。期待をさせて傷つけるぐらいなら、その方が正しいのではないだろうか。
えぐられるような恋の痛みを、私は知っているのだから。




