映すモノ
短編です
部屋の掃除を始めた。大学も卒業が近づいて、就職ももう決まってしまった二月は、大学四年生にとっては暇の時期ではある。まぁ、俺は引っ越しがあるから、焦っているんだけど。引っ越しする時期は結構前に決めていたんだから、ちょっとずつ進めておけばよかったと、今更ながら後悔した。
とはいえ、2月ともなれば、荷物はほとんど箱の中だ。生活していると、存外使わないものが多い。
棚の中に最後に残っていたファイルを取り出すと、大量の写真が出てきた。
「うわ、懐かしい」
ファイルの最初の頃の写真は、俺が大学に入った頃に撮ったものだ。俺は大学の写真サークルに入った。カメラは大学から貸してもらえるし、大学生のみが参加できる賞などにも応募が出来る。
大学生になって初めて一眼レフなんてものに触れたけど、存外そのカメラの奥深さに俺はどんどんハマって行った。
「あー、コレ、大学の近くじゃん」
そんなことを言いながら写真をめくっていくと、俺が映っている写真が出てきた。
「これって・・・」
自分で写真を撮っていたら、自分が映るはずがないのに、何故か俺が映っている。
「誰かからもらったんだっけ?」
よく見ると、俺はカメラの方を向いて、笑顔を見せている。つまり、俺は撮られることを認識していることになる。誰がこれ撮ったんだろう。
不思議に思いつつも、次のページに進む。と、次のページにも、同じように俺を映した写真が出てきた。
「え~、コレ記憶ないなぁ・・・誰が撮ったんだ?」
俺みたいな被写体に向いてない人間を撮るようなやつ、うちのサークルにいたかな。
俺はその写真をスマホで撮って、サークルの仲間に送ってみた。
[この写真見覚えある?誰が撮ったかわかる奴いない?]
メッセージを送ると、数人から返事が来た。
[自前のカメラ持ってたやつじゃない?]
自前のカメラ持ってたやつ、そう言えばいたな。でも顔が思い出せない。そもそも喋ったような記憶がない。
[お前仲良かったじゃん、忘れたの?]
一人の奴からそんな内容が来たけど、そうだっけ?順に友人たちの顔を思い浮かべるけど、自前のカメラを持っていて、俺と仲が良かった奴・・・。記憶を検索しても出てこない。
[名前分かる?]
思い切ってそう書いてみたけど、俺を含めて、そいつの名前を憶えてる奴は誰もいなかった。おいおい、辞めろよ、怖い事言うなよな。
[おい、俺の家にも同じような写真あるんだけど]
友人がそう言って、写真を送ってきた。それは、その友人がピースして映っている、俺と同じ構図の写真。
[俺こんなの撮ってもらった記憶ない]
そもそも、この写真を貰った記憶もない。つまり手元にある理由もよくわかっていないのが現状だ。友人もそんなことを言っていた。
誰が何の目的で、この写真を撮って、現像して、渡してきたのだろうか。
後日、大学に行く用事があったから、そんな話を写真部顧問の爺ちゃん先生にしてみた。
「あぁ、今年も出たか」
先生はそう言って笑っていた。
——え、コレそう言う話!?——
夏にはまだ早いんですが・・・。




