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03. Continue:01-1

「――ぁあっっ!!」

「――ぅぁっ!!」

「――っ!!」


 悲鳴が上がる。地面を叩く音。

 わずかに身体が跳ねると共に、視界が明るくなる。同時に視界に映るのは。


「あ……」

「あれ?」


 アクセル、エマ、ジャンヌの三人それぞれの姿。それを見ながら、三人が三人とも目を白黒して互いを指さしていた。


「生きて……る?」

「え、ここって……『(いこ)いの火』?」


 生きている。起きている。そして魔王城の外に――憩いの火の周りにいる。

 確かにあの時、三人ともシェドザールに焼かれ、殺されたはずだ。しかし今、こうして生きている。五体満足だ。

 その事実に、ジャンヌがその場に膝をついて両手を組みつつ空を見上げる。


「ああ……きっと世界神アシア様のご加護ですわ。私たちに、もう一度チャンスを下さったのですわ、きっと」

「そうか……そうかもしれないな」


 ジャンヌの若干恍惚とした言葉に、アクセルもそっと目を細めた。

 何のおかげ、と言うなら、まさしく世界神アシアの思し召し(・・・・)だろう。それが一番間違いがない。

 だが、そうだとしても、だ。エマが自分の腕や脚を見ながら言う。


「え、というかこれ、どうなったのあたしたち? 生き返ったの?」

「いや……多分、違う(・・)


 エマの疑問に真っ先に否を唱えたのはアクセルだった。革袋の中に手を突っ込むと、そこから大きな堅く焼き締めたパンを取り出して割ってみせる。


「見ろよ、これ。城に入る前に朝メシで食べたはずのパンがそのまま残っている。それに玉座の間に突入する前に飲んだはずの回復薬も」


 パンを取り出し、回復役の瓶を取り出し、それを手にしながら眉間にシワを寄せる。そんなアクセルの言葉に、エマもジャンヌも目を見開き、慌てながら袋の中を覗いていた。


「……ほんとだ」

「そ、それだけじゃありませんわ。魔王城の中で倒した魔物のドロップアイテムもありません」


 そう、革袋の中には食べたはずのパンがあり、使ったはずの回復薬があった。そして魔王城を進む中で手に入れた追加の回復薬やゴールド、その他諸々の武器やアイテムが、入っていない。

 ということはだ。アクセルが大きな疑問を口にする。


「これってつまり……時間が戻っている(・・・・・・・・)ってこと、か?」


 時間の巻き戻り。

 つまりは死ぬ前、憩いの火で休んだ時に、何らかの力で戻されたということなのか。そんなことが。

 にわかには信じられない事態だ。しかし現実問題、他に思いつく状況がない。世界神アシアの加護、という形で片付けるのは簡単だが、エマもジャンヌも難しい顔をしながら頷いた。


「多分……」

「ええ……恐らくは。分かりやすく証明できるものがないのがもどかしいですわね」


 エマが腕を組むのとともに、ジャンヌが額に指を当てながら首を振った。神の力のおかげで、というならありがたいことこの上ないが、悲しいかなそれを証明するすべもなく、何なら本当に「戻った」という確信も持てない。

 だが主観として、時間は戻った。自分たちも生きている。それはいいことだが、結果として「魔王討伐」の目的は未だ、達成されていない。

 アクセルは考えた。これはつまり、チャンス(・・・・)なのではないか。

 一度失敗した、なんなら完敗を喫した魔王シェドザールにもう一度挑めるのだ。しかもありがたいことに一戦目の記憶は保持されている。手の内が分かる。


「ともかく、魔王城に突入する前に時間が巻き戻ったってことは、魔王討伐の使命を果たすことができる、ってことだ。なら、前回と同じ失敗はしない」

「そうね、魔王の戦い方は時間が戻る前に見ているわ」


 アクセルの発言にエマも大きく頷いた。

 戦闘において「手の内が知れている」ことは間違いなく、大きなアドバンテージだ。状況を考えるにシェドザールの側も、同じようにアクセルらの手の内を理解している可能性が高いが、こちらにはレベルアップ(・・・・・・)という手段が残されている。

 つまりだ。前回敗北を喫したのが己の力不足と言うならば、レベルを上げて再度挑戦すればいいのだ。力をさらにつけて挑戦すれば、場合によっては状況を覆せるかも知れない。

 急いで鍋に水を張り、スープに干し肉とパン、香草を放り込む。適当な味付けをして煮込んだスープをかき込むように腹に入れると、さっと口元を拭ったジャンヌが立ち上がった。


「ですわね。しっかり体勢を整えて、力もつけてもう一度挑みましょう」

「ああ。そうと決まればこんなところで、ぼうっとしているヒマはない」


 エマも口元をぐいと拭いて、鍋とボウルを抱えて川に向かう。洗っているヒマも惜しいというくらいにざっと水を流して布で拭い、革袋に放り込むと、アクセルも剣やら何やらを抱えながら立ち上がった。


「行くぞ。今度はもっと鍛えてレベルを上げるんだ!」

「ええ!」

「はい、参りましょう!」


 時間が惜しい。少しでも多くの魔物を城内で倒し、魔王のところに向かわなければ。あんまりレベルアップに時間を使いすぎたら一日が終わってしまう。

 魔王城に繋がる橋を渡る前から剣を、杖を抜き放った三人は、我先にと魔王城の門の中へと駆け込んでいった。

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