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ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリアのヘイミッシュ

任け犬の遠吠えの外伝になります。

こちらはキャラクターの個性や、犬種の特性の掘り下げをするギャグテイストになります。


時系列はシアンがネズミを追い払った後、開拓している三年間の間に起こっていた日常です。


こちらは不定期更新になりますが、一ヶ月に二回は更新できるように頑張ります。


本編の『任け犬の遠吠え』諸共、よろしくお願いします。

ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア。


通称「ウエスティ」


白く美しい髪と、髭をもつテラニスの一族。

その中でも一番のジェントルマン。

それがヘイミッシュである。


「ジェントルマン?どこがだよ?」「自惚れ屋!」

どこからともなく疑問の声が飛んでくるが、ヘイミッシュは気にしない。


なぜなら彼はジェントルマンだから!


今日も入念に髪型から服装まで、身だしなみはしっかり整える。

鏡のように自分を映し出す鉱石を見て、うっとりとする。


「今日も完璧な美しい姿ですね。流石、私」


誤解されそうだが、ヘイミッシュはナルシストというわけではない。

自分以外のものも美しいと思うし、当然愛すこともある。

ではなぜ、彼は自分の姿に酔っているのか?


それは彼の『フェチ』にある。


美しい自分にフェチを感じているのではない。

美しい自分が、土仕事に汚れ、無惨な姿になる。

そしてまた、一度水浴びをすれば美しい自分に戻る。


このギャップ! 美と醜の複合型フェチ。


「さあ、今日も穴掘り頑張りましょう!」 だから穴掘りが大好き。


美しい白い髪が、髭が、どんどんどんどん土で汚れ、茶色くなっていく。

作業を頑張れば頑張るほど、汗が髪や髭に染み込み、汚れが広がっていくのを見るのが大好き。


紳士だった自分がドワーフと変わらない見た目になっていく、その感覚が楽しくてしょうがない。

「儂らのこと馬鹿にしてんじゃろ?」


そして作業の後、水浴びをすればたちまち美しいウエスティの自分に戻る。

ああ、素晴らしい。ヘイミッシュは常々思っている。


「私がこの地に生まれたのは運命だ」……と。


ある日のこと、この地に新しい仲間が増えた。

どうやら村を襲撃され、深い森を抜けて辿り着いたという。

ああ、なんて酷いことをする連中がいるのだろう。聞けば、目的は白い髪のカニスだという。

「もし私の情報が入ったら、真っ先に狙われてしまうのではないか」という恐怖もあった。


だが、ヘイミッシュはこの地を離れずに、ひたすら穴を掘り続けた。

なぜならここはヘイミッシュにとっての運命の地だから。


そしてまた月日が経ったある日。運命の出会いをする。

自分と同じ、美しい白い髪を持つカニス。

ヘイミッシュのような整った髪型ではなく、ジャギーのかかったヘアスタイル。

それでも人目を引くような美しいロングヘアを持つカニスがこの地に訪れたのだ。


「ああ! これがもしかしたら恋心というやつなのかもしれない!」

そう思ったが、どうやらそれは勘違い。

彼女の隣にいる黒髪のカニス…おそらくは伴侶であろう存在がいても、特に何も思うことはない。


ただ! 「一緒に穴掘りをしてほしい!」という気持ちだけが溢れてくる。

「私と同じように、あなたも汚れたらみすぼらしい姿になるのでしょうか?」 その知的欲求が止まらない。


「というわけでシアンくんに提案です」 「何が『というわけ』なんですか……?」


流石に伴侶がいる人妻に対し、そういった誘いをするのは失礼だとヘイミッシュも自覚している。

だが、欲求は満たしたい。

彼女の息子であるシアン少年は、この地で大きな貢献を残し、ドワーフたちと友好的な関係を築いている。


あまり下に降りてこない、彼の母を誘うよりも、彼から母を誘ってもらった方がいい。

ヘイミッシュはそう判断した。


ヘイミッシュは決して、その相手に性欲や愛欲を向けているわけではない。

だがこの地に訪れた白髪の仲間が汚れたらどうなってしまうのか、その欲求だけは抑えられない。


「お願いしますシアンくん。君のお母様! もしくは妹君のソラさんでもいいです! 一緒に穴掘りしてくれないか誘ってくれませんか! なんでもしますから!」


一番の紳士がどこへやら、外聞もへったくれもない姿を晒すヘイミッシュ。


「……今、なんでもするって言ったね?」


おかしい。 普段から礼儀正しいシアンからは想像もできない言い回し。

しかも声は低く、かなりの怒気を纏っているようにヘイミッシュは感じ取った。


それに、目の前にいるシアンは青ざめた顔で口をパクパク開きながら、ヘイミッシュの後ろを指さしている。


ヘイミッシュは腕を組み、考えた。

自分の発言の危うさ、シアンのリアクション。


後ろに誰がいるのかは、見なくてもわかる。


「ああ、私の鼻も鈍ったものだ」


これから起きる全てのことを受け入れる覚悟で、その場を動かずにいる。

ヘイミッシュの後ろにいたシアンの父・マットが、ヘイミッシュの首を鷲掴みし、シアンに向かって言う。


「今日の狩りは、ヘイミッシュさんに頑張ってもらおう」


マットは暴力を振るう男ではない。

だが妻や娘を土で汚したがっていた男に、罰を与えないわけはなかった。

ヘイミッシュはそのまま大人しく引きずられ、過酷な狩りに同行させられた。


だが、狩りを同行して一つわかったことがある。


「狩りは狩りで森の中を走り回って汚れるから、これもありですね!」


ヘイミッシュはその日、狩りを全力で楽しんだという。

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