その票ください
選挙運動最終日。
町は、静かに、しかし確実に、選挙の空気に包まれていた。
田所誠司は、最後の力を振り絞って「握手マラソン」を開催。
町内を走りながら、すれ違う人に片っ端から手を差し出す。
「その手、ください!」と叫びながら。
トリビア①:「選挙運動最終日は“午後8時まで”。それ以降は“ただの運動”になる」
町民の反応:「元気だけはある」「ちょっと怖いけど、応援したくなる」
---
三輪律子は、町内放送で“最後の格言”を流した。
「選挙とは、心の姿勢である」
——三輪律子(再掲)
さらに、町内の公園で“読書黙祷”を提案。
「町の未来に、静かに祈りましょう」
参加者は2人。うち1人は犬。
トリビア②:「選挙運動で“宗教的表現”は避けるべき。黙祷はグレーゾーン」
町民の反応:「犬が静かだったのが印象的」「三輪さん、最後までブレない」
---
そして神田は、喫茶店の前で、最後の演説を始めた。
マイクもスピーカーもない。
ただ、ネルドリップの音と、静かな声だけ。
「選挙って、お願いすることなんですね」
「命令じゃなくて、お願い」
「だから、僕は言います」
「その票、ください。
でも、コーヒー飲んでからでいいです」
トリビア③:「選挙運動最終日は“街頭演説よりSNSライブ”が効果的。拡散力と共感力が鍵」
神田は、演説の様子をライブ配信した。
コメント欄は、静かに、でも確実に、盛り上がった。
「沁みた」
「この人に町を任せたい」
「選挙って、こんなに優しくていいんだ」
午後7時59分、神田は最後の一言をつぶやいた。
「町の空気は、誰が淹れるかで変わるんです」
そして、ネルドリップの最後の一滴が落ちた。




