愛の大きさ
静かにカップを置いた女が、挑むような視線を投げた。
女「ねぇ……わたしへの愛はどのくらい?」
男「愛は無限さ」
女「でも、前より冷たくなった。昔はもっと優しかったのに」
男「……わかってる。ごめんよ、けど、今は余裕がないんだ」
女「余裕がないって言えば、私が我慢すると思ってるの?」
男「違う。ただ、俺だって必死なんだよ」
…少し沈黙。
女は身を乗り出し、唇をわずかに尖らせた。
女「ねぇ、お願い。ほんの少しでいいの。もっと愛がほしい」
男「……そんなこと言われても」
女「私、愛がないとやっていけないの。
友達だって、
みんなもっと
愛をもらってるよ?」
男「……!」
男は深くため息をついた。
しばし考え込んで、テーブルを指でトントンと叩く。
男「わかった。じゃあ……千円、上乗せしよう」
娘「やった!ありがとう、お父さん!」
喫茶店の空気が一瞬凍りつく。
父「……ただし条件がある」
娘「えっ?」
父「まず、テストで赤点は絶対に取らないこと」
娘「ちょ、急に勉強の話?」
父
「当然だろう。値上げには見返りが必要だ」
娘「……じゃあ、もし全部平均点以上だったら?」
父「千円プラスだ」
娘「よし!」
父「でもな、部屋を片づけなかったら五百円マイナス」
娘「えぇぇぇぇ!?」
父「さらに、俺に隠れて夜更かししてゲームしたら――」
娘「……したら?」
父「即刻、値上げ取り消し」
娘「鬼だ……」
父「鬼じゃない、父だ」