自覚
この物語のヒロインは、二十一歳の新人恋愛作家。
可憐で少女のような一面を持ちながらも、どこか大人の色香が漂い、触れれば理性を揺さぶられる――そんな魔性を秘めています。
生真面目な担当編集者として、年上として、彼女に振り回される藤堂慎也の心を、どうか一緒に覗いてみてください。
可憐な笑顔と、甘い声に、藤堂慎也は抗えず絆される。
鼓動が耳まで届きそうで、視線を逸らそうとしてもできない。
彼女の指先が紙の端をそっと撫でるたび、心の奥が熱くなる。
編集者として、年上として、距離を保たなければ——そう思うほど、意識は彼女の方に引き寄せられる。
まるでこの空間だけ、時間が溶けてしまったかのようだった。
彼女の小さな仕草一つひとつが、理性の糸を少しずつほどいていく。
どれだけ理性を固めても、彼女の笑顔には勝てないことを、藤堂は痛いほど知っていた。
そして、胸の奥で芽生える感情——これはただの仕事上の距離の揺れではない、と自覚せずにはいられなかった。
「ねえ、これ、文章のリズム、ちょっと硬く感じませんか?」
ふと、彼女の声が耳元で響いた。
「あ……そうですね。ここは少し柔らかく直したほうが自然かもしれません」
心臓が跳ねるのを感じながら、藤堂は冷静を装って返す。
その笑顔が、理性の鎧をほんの少しずつ剥がしていく。
「藤堂さん、どうしてそんな顔してるんですか?」
不意にからかわれるように訊かれて、思わず視線が泳ぐ。
「え……いや、なんでもないです」
本当は「君の声が、笑顔が、胸をざわつかせる」と言いたいところだった。
けれど言えない。編集者として、年上として、守るべき立場がある。
彼女はころころと笑った。
「本当に大人って不器用ですねぇ。もっと素直になればいいのに」
小首をかしげて微笑む姿に、藤堂の理性はさらに揺らぐ。
文字のやり取りだけでなく、目の前にいる彼女の全てが、自分を抗えなくさせているのだ。
「距離、近すぎですよ……」
本当にその通りだ。
目の前の彼女の指先、仕草、声の一つひとつが、藤堂を惹きつけて離さない。
編集者として、年上として、守るべき立場を胸に刻みつつも、もう既に心は少しずつ彼女に侵されていた。
甘く危うい予感に胸がざわつき、これから先、自分はどうなってしまうのだろうと、不安と期待が入り混じる。
その答えは、まだ誰にもわからない——ただ一つ確かなのは、彼女の魔性に、藤堂慎也は抗えず絆されているということだった。
読んでくださり、ありがとうございました。
彼女の甘さと危うさに、理性も心も揺れっぱなしな主人公はどうでしたか?
この物語が、皆さまの胸にもそっと残るような、そんな甘く溶けてしまいそうな気持ちになってくれたら嬉しいです。