表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リミット  作者: 過酸化水素水
8章 黒幕
53/61

間話 公園

 

 少女は家路を急いでいた。

 帰路途中にある公園にたどり着いた頃には、周囲は夕暮れの橙から夜の紺へと移ろっている。辺りに設置されている街灯も、ぽつぽつと灯り始めていた。

 いつもなら下校中の学生や帰宅中の会社員などの姿もあるのだが、今日に限っては人っ子一人見受けられない。その事が微妙に焦燥感を煽るのか、少女は自然と足早になってしまう。


 公園を横断し出口付近に差し掛かったところで、少女は一息入れた。公園の中央に設置されている時計を見て、どうやら門限に間に合いそうな事が分かったからではなく、単に息が上がってしまったからだ。

 一旦足を止めて、乱れた息を整える。普段殆ど運動をしないため直ぐに体力が尽きる自分の体を、少女は恨めしそうに見つめた。


 誰もいない公園で、少女の呼吸音だけが微かな音を発していた。それを何となく耳に入れながら、少女は数度の深呼吸をしてようやく息を整えた。

 再び歩き出そうとしたが、直ぐに立ち止まる。何か物音が聞こえてきた気がしたのだ。

 ゆっくりと左右を見回す。特に変わった様子はない。

 気のせいだったと、少女は気を取り直して再び歩き始めた。


「藍田さん」

 五・六歩程度進んだ時、唐突に背後から声を掛けられた。

 小さな声だったが、静寂に包まれた公園に音量を阻害するものはない。少女の耳に届くには十分だった。

 驚きから足は止まってしまうも、何とか悲鳴を抑える事には成功した。少女は動悸が乱れた胸そのままに、恐々と振り返ろうとするが――――


 少女に出来たのは、勢いよく迫ってくる金属の煌めきを、視界の端に映す事だけだった…………。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ