表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

84/110

83 学校の怪談?

 下駄箱を確認すると、オタケ君の下履きがあった。

 つまり、オタケ君はまだ学校にいる。


 何か部活に入っていたっけな?

 そんな話は聞いたことがない。

 というか、オタケ君の情報を、僕は何も知らない。


「とりあえず教室に行ってみるか」


 ほんのりと薄暗くなった人気のない廊下を進む。

 まだ怖いっていうような暗さではないけれど、普段騒がしい廊下が静まり返っていると、少し不気味だ。


 何も起きないといいけど……


 いや、幽霊なんて信じてないけども、それでもちょっと、不気味で怖い……


 今さら、高名瀬さんに付き合ってもらえばよかったと後悔している。

 別れて五分も経ってないのに。


 ダッシュで戻って「薄暗い校舎が怖いから、やっぱり一緒にいて!」ってすがりついてみようか?


 ……いくらなんでもカッコ悪過ぎる。

 せめて、「今日、予定があるかもしれないけれど、僕は薄暗い校舎が怖いから一緒にいてほしい」って最初に言っておくべきだった。


 一度断ったことを再度頼むのはカッコ悪い。

 自分で言い出したことを覆すなんて、男子としての面子が立たないというものだ。


 ……ん?

 幽霊が怖いのに男も女もないでしょうが!

 なのでそこは別にカッコ悪くない!


 カッコ悪いのは、自分の発言を貫けないこと。

 これはそう、「男に二言はない」というヤツだよ。うん。


「でも、とりあえずChainだけ送っとこう」



 鎧戸『校舎内が薄暗くて、廊下がめっちゃ不気味……』

 鎧戸『高名瀬さんに来てもらえばよかったと激しく後悔中(´;ω;`)』



 うん。

 愚痴るくらいはセーフ。

 これで『なにやってるんですか』ってメッセージでも来れば、気も紛れるだろう。


 とりあえず、教室を目指すか……

 静まり返る廊下を、一人、歩く。

 こつこつと、自分の足音だけが、いやに反響して不気味さを増幅させる。


 あの角を曲がれば階段。


 階段の上から、この世のものじゃない生徒がじぃ~っと覗き込んでたら……漏らす自信がある。


 ドキドキ……



 ――ピロン♪


「ふぉわちゃぁああ!?」


 び、び、びっくりしたぁ!?

 なに、一体!?



 高名瀬『戻りましょうか?』

 鎧戸『大丈夫! 大丈夫だけど、受信の「ピロン♪」で漏らしかけた』

 高名瀬『世間一般では、その状態は「大丈夫」とは言いません。戻りますね』

 鎧戸『いや、本当に大丈夫だから。ムリなら早急に帰るし』

 高名瀬『……まぁ、そうですね。別に今日でなくても問題ないでしょうし』

 鎧戸『ちょっと愚痴りたかったのと、気を紛らわせたかっただけ。ごめんね』

 高名瀬『別に構いませんが……オバケ怖いんですか?』



 あ、小馬鹿にしてるな?

 物っ凄くにやにやしてる顔が脳裏に浮かんできたよ。



 鎧戸『高名瀬さん。こんな言葉を知っていますか? 幽霊の正体見たりキャリーオーバー』

 高名瀬『前回分が持ち越されて倍近い幽霊が集まってませんか、その状況?』



 怖いことを言ってくる!?

 直後に『枯れ尾花です』と訂正するChainが届く。

 あれ、そうだっけ?

 ずっとキャリーオーバーで覚えてた。



 高名瀬『幽霊の正体見たりキャパオーバーになって、気絶しないよう気を付けてください』



 どやぁ!


 って顔が目に浮かぶようですよ、高名瀬さん!?

 なに、『キャリーオーバー』と『キャパオーバー』でうまいこと言った感醸し出してるんですか!?



 鎧戸『高名瀬さんのおかげで教室までたどり着けたよ』

 高名瀬『それは何よりです。では、わたしはそろそろ電車に乗りますので』

 鎧戸『うん、気を付けてね。僕も教室だけ覗いていくよ』

 高名瀬『お気を付けて』



 何に!?

 教室を見るだけの僕は何に気を付けろと!?

 何か出ちゃう可能性を含んだ応援やめてくれる!?


 スマホをしまい、教室のドアに向かう。

 さっさと確認して、誰もいなかったらさっさと帰っちゃおう。


 ドアを開けようと腕を伸ばすと、勢いよくドアが開いた。


「うぉっ!?」

「ぎゃあぁああ!?」


 なんか出てきた!?

 ゴリラの幽霊が!


「なんだ、鎧戸か、脅かすな」

「佐々木……先生?」


 中から出てきたのは、担任佐々木先生だった。

 ……脅かさないでよ、もう。


「どうした、こんな時間に? 忘れ物か?」

「えぇ、まぁ、そのような感じで。先生は? 忘れ物ですか?」

「あっ、あぁ、まぁ、そんな感じだ! じゃあ、忘れ物を取ったらお前もすぐに帰れよ! じゃあな!」


 なんだろう、あの焦りぶり……

 なんか、めっちゃ汗かいてたし、心做しか服も乱れてたような……何してたんだ、あの教師? 教室で。


 訝しみつつ、教室に入ると。


「きゃあ!?」


 お昼ごろに聞いた覚えのある悲鳴が聞こえ、そちらへ目を向けると――


「よ、鎧戸……、なんでここに?」


 僕のバスタオルを胸元に押さえつけるオタケ君がいた。


 シャツのボタンは全開で、そこから覗く胸元を慌てて隠したような格好で、ひどく焦って、薄っすらと汗をかいて、挙動不審にこちらを窺っている。



 一体何があった、この教室で!?



 オバケや幽霊よりも、見てはいけないモノを見てしまったかもしれない。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
は〜。やっぱりノクターンでしたか。移動した方が良いでしょうか?ちゃんと宮地先生に自分、憑いていきますので。
姉さん、事件です ・・・事案です?ww 高○政伸さん主演のドラマH○TEL好きやったなぁ
これは確かに見てはいけないものかもw 疑惑はますます深まったw さて、真実はいかに、ですね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ