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73 フレンド

 もうすっかりとバレてしまったので、「ここ以外では口外しない」という約束を取り付けて、僕たちは今日に至るまでの経緯を緑モヒカンこと御岳連国君に話して聞かせた。


 もちろん、体電症や部室のことは伏せたままで。



『つまり、教室でこっそりプレイしていたゲームを慌てて隠した高名瀬のブラジャーが弾け飛んで、お前たちは仲良くなったわけだな』

『どうしてそんなどうでもいいところを話したんですか、鎧戸君!?』

『いや、だって、仲良くなったきっかけだったし、必要かと』

『言葉を濁すということを知らないんですか!?』

『濁すって……「高名瀬さんの『ボィン』が『ばぃん』で『ぅわぁ~い』だった」とか?』

『全然濁せてませんし、賠償を請求します!』

『じゃあ、山梨の桃&シャインマスカットチョリッツを進呈するよ』

『なんでもかんでも食べ物で誤魔化せると思わないでくださいね(●`ε´●)ぷん!』

『じゃあ、いらない?』

『いります。それはすでにわたしに所有権が移譲されたチョリッツです』

『なんというか、本当に仲がいいんだな、お前らは』



 万が一にも他人に目撃されないように、フレンド掲示板で会話する僕たち。

 なんだろう。

 このリアルタイムで文字が埋まっていく感じ、ちょっと楽しい。



『僕、こういうお友達と楽しむ感じのゲーム初めてかも。すごく楽しいねモンバス。二人はいつもこういうことしてるの?』

『いえ、わたしは基本ソロプレイですので』

『俺も、フレンドはお前たち二人が初めてだ』

『……このゲームのコンセプトって、仲間と一緒に巨大な魔獣を狩るってヤツじゃなかったっけ?』

『う、うるさいですよ! 狩れれば、パーティーの人数などどうでもいいのです』

『魔王の言う通りだ。それに、プレーヤーの中には出会いを求めるナンパな連中も多いからな。煩わされることの方が多いんだ』

『そうなんです! 一方的にこちらに求めるだけの人が、ギブアンドテイクを掲げて群がってくるんです』

『俺も、4ナンバーズになって以降、そういう手合いにはうんざりさせられている』

『いや、そうじゃなくてさ、こうやってオフラインの友達と――あ、そうか。ごめん』

『今何を謝ったんですか、鎧戸君!?』



 いや、オフラインの友達がいないんだったなと思い出しまして。



『でも、御岳連国君はお友達多いんじゃないの? 御岳連国君は』

『なぜ二回言ったんですか? 当てつけですか? 宇治抹茶あずきチョリッツの追加を要求します』



 わぁ、賠償が増えちゃった☆



『俺は現実世界でも、こっちと似たようなもんだ』



 御岳連国君が、緑のモヒカンを揺らして空を見上げる。



『お前らも知っていると思うが、俺のオヤジは少々デカい会社をやっている。そういうのに群がって、俺に取り入ろうってヤツらがほとんどさ。誰も俺を見ちゃいない。見えているのは俺の後ろに立ってる肩書きっていうデカい看板だけだ』



 御岳連国君、案外ポエマー?

 というか。



『御岳連国君のお家って、大きな会社なんだ。じゃあお父さんは社長さんだね。あ、じゃあ御岳連国君は社長令嬢だ』

『令嬢じゃねぇよ。っていうか、本当に知らなかったのか?』

『ごめん。他人の家庭事情とか、割と興味なくて』

『高名瀬は知っているよな?』

『わたしも織田家君の事情は知りませんでした』

『……織田家?』



 あぁ、御岳連国君。

 それはきっと、『おたけ』って打って誤変換してるんだよ。



『すみません。お竹君の名前、なかなか変換されなくて……』

『……お竹?』

『高名瀬さん。「みたけ」だよ』



 魔王様フリーズ。

 君、また忘れてたね?



『ニックネームです』



 言い訳にしても苦しいよ、高名瀬さん!



『……オタケ』

『あのね、御岳連国君』



 それは、高名瀬さんが自分のミスを認めないための方便だよと教えてあげようとしたのだが、それより前に御岳連国君が『鎧戸!』と緑のモヒカンを揺らしてこちらを睨んだ。



『オタケだ』

『Why?』

『……わ、わほ、ぃ?』



『わほぃ』!?

 えっ!?

()()()』って読んだの!?



『鎧戸は何を言っているんだ?』



 それはこっちのセリフだよ!?



『………高名瀬、翻訳してくれ』

『「なぜ?」だそうです』



 御岳連国君、もしかして結構ヤバい人なのかな、――成績が。



『実はな、結構ムリを押し通したという自覚はあったんだ。だが、お前たちは快く俺を迎え入れてくれた。オヤジの会社のことを抜きにして、俺と普通に接してくれた。そんなお前たちがつけてくれたニックネームだ。俺は気に入ったぞ』



 高名瀬さんの勘違いが、ニックネームに採用!?

 ただの負けず嫌いなのに!?



『他の連中は俺をレンゴクと呼ぶが、お前たちだけは、俺をオタケと呼んでくれ。秘密を共有する三人だけの合言葉だ』



 合言葉……では、ないよね?



『お前たちは、俺を信じて秘密を打ち明けてくれた。だから、俺もお前たちを信じる』



 いや、実はまだまだ秘密があるんだけどね、僕たちは。



『俺たちのフレンド登録は、現実世界に戻っても永久に不滅だ!』



 もしかして、やっぱり友達いなかったのかな、御岳連国君……おっと、訂正、オタケ君。



『それじゃあ、オタケ君、ってことで、いい?』

『あぁ、そう呼んでくれ、よれぇーど!』

『僕のことは鎧戸で!』



 滑舌、悪くないので!

 そんなニックネームにするつもりもないので!



『それじゃあ、約束通り、ドラゴンを狩りに行こうぜ! 高名瀬! 鎧戸! そしてオタケ!』



 なんで自分を呼んだのかな?

 あ、字面的に混ざりたかった?


 オタケ君、案外寂しがり屋なのかな?



 そんな感じで、僕のフレンドが一人増えた。







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― 新着の感想 ―
3人寄ればボッチじゃ無いww
仲間になりたそうにこっちを見ていた御岳君が仲間になりましたw しかし、仲間になるならコーヒーでも用意しておかないといけなさそうですねw
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