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101 来訪者二名

 高名瀬さんのお説教が終わったころ、新たな来客があった。

 それも二人。


「おはようございます、本日は、お日柄もよく、お招きいただき恐悦至極にございます」

「お……ぉはょ」


 純白のタキシードを着込んだオタケ君と、制服姿の戸塚さんだ。


「え、結婚するの?」

「ばっ!? し、しないわよ! ……まだ」


 最後に乙女な呟きが漏れてたよ、戸塚さん。


 でも、そうか、違うのか。

 純白タキシードで花束を持ったオタケ君と戸塚さんが一緒に来たから、そういう報告なのかと。


 戸塚さんも、今日はいつものギャルギャルしい格好よりも幾分落ち着いた雰囲気だし。

 スカートもいつもより丈が長いし、いつも腕や髪につけてるじゃらじゃらしたアクセサリーもつけてない。

 ベストの下からシャツの裾は出てるけども、それにしたって随分とおとなしい雰囲気だ。


「えっと、今日って誰かの冠婚葬祭?」

「違うわよ。……その、昨日のことって、やっぱ、……あたしのせいだから、ちゃんと謝ろうと思って…………」


 誠意を見せるつもりで、おとなしい格好をしてきたのか。


「だから、昨日のは戸塚さんのせいじゃないってば」

「それでも! ……やっぱ、自分で納得できなくて……昨日、レンゴクから高名瀬は無事だってChainもらって、ほっとして……」


 でも、それだけで終われなかったらしい。


「だから、今日午前中学校を休んで話をするって聞いたから、あたしもそこに参加させてほしいってレンゴクに無理言って、連れてきてもらって……」


 行動力すごいなぁ。

 きっと、オタケ君は断りきれなかったんだろうな。

 今の戸塚さんを見ているとそんな気がする。

 目がマジだし、鬼気迫る迫力がある。


「それで、高名瀬は?」


 高名瀬さんはまだ二階にいる。

 姉の指示で、オタケ君の出迎えは僕一人でおこなった。


 もしかしたら、戸塚さんが一緒に来るって知っていたのか、察したのかして、高名瀬さんを一時的に二階にとどめたのかもしれない。

 ドアを開けていきなりだと、やっぱ衝撃が強いから。


 そんな僕の予想が当たっていたのか、ある程度時間を置いてから、高名瀬さんがゆっくりと階段を降りてきた。


「あの…………おはよぅ、戸塚さん」

「あ…………高、名瀬……」


 玄関先で、互いに俯いて固まる二人。

 やっぱり、すぐに元通りってわけにはいかないよね。


 ここは、ゆっくりと時間を使って関係をほぐしていくべきだろう。


「みんな揃ったみたいだから、とりあえず上がって」


 高名瀬さんの後ろから、姉が降りてくる。

 そして、僕たちの後ろに立った姉を見て、オタケ君が奇声を発する。


「おはようございます本日もお美しい!」

「あはは……ありがとね、レン君」

「ごちそうさまです!」

「なんか知らないけど、勝手に食べないでね~」


 姉が苦笑を浮かべている!?

 あの姉の表情を曇らせるとか、やるね、オタケ君!?

 姉への嫌がらせのために、今度泊まりに来ない?


 あぁ、違う。

 ダメだ。

 オタケ君は姉色に染まりたい願望の塊なんだった。

 近付けちゃいけない。


「君に姉をあげるわけにはいかん! 帰りなさい」

「そこをなんとか! 頼む、義理の弟!」

「貴様に弟と呼ばれる筋合いはない!」

「ここに五百万ある!」

「そのリアルな金額はやめなさい! ちょっと心がグラついちゃったから!」


 五百万あったら、なんでも出来るじゃない。

 高校生には過ぎた金額だよ……


「姉の価値なんか、PIMO(ピモ)2個分くらいだよ」

「随分と安く見積もってくれたなぁ、弟よ」

「バカモノ、6個しか入っていないPIMOの2個だぞ!? 仮にPIMO2個くれって言ったら全力で拒否るだろう?」

「無論だ! 『氷菓の実』でギリ許せるレベルだぞ『1個ちょうだい』は! ましてや2個などと!」


 氷菓の実は10個弱入ってるからね。

 ……いや、貴様は氷菓の実すらくれないじゃないか、姉!


「貴様など、PIMO2個でお釣りが来るわ」

「よぉ~し、それじゃあ今度PIMOを一箱奢ってやるから、一生あたしの面倒を見ろ!」

「どんな拷問だ!? お断りだよ」

「あの、鎧戸君……こっちはこっちで、今、結構精神的にギリギリの対面をしているので、面白い姉弟喧嘩は二階でやってもらえませんか?」


 と、高名瀬さんが微妙な表情で訴えてくる。

 あぁ、そうか。

 不幸な行き違いでギクシャクしたまま絶縁状態にあった親友と面と向かうのって、結構緊張するか。


 でも心配ないよ。


「戸塚さん、昨日は高名瀬さんのことすごく心配してたんだよ。目に涙を浮かべて、『助けてあげて』って。ね?」


 と、戸塚さんに話を振ると――


「……うそ。レンゴクの好きな人って……ササキ先生? っていうか、ササキ先生って鎧戸のお姉さん? え、なんで苗字違うの? 既婚者? ダメよ、レンゴク、不倫はダメ!」


 ――こっちはこっちでパニックだった。


 あぁ、もう……だから、朝から情報量多いって!







いつも拙作をご愛読いただき、本当にありがとうございます。

これまで毎日更新を続けてまいりましたが、最近の多忙により、執筆時間の確保が難しくなってきました。


そのため、誠に勝手ながら今後は「二日に一回」の更新とさせていただきます。

楽しみにしてくださっている皆さまには申し訳ない気持ちでいっぱいですが、物語の質を落とさず、心を込めて書き続けるための決断です。


これからも、少しずつではありますが、物語の世界を丁寧に紡いでまいりますので、引き続き応援していただけたら嬉しいです。


どうぞよろしくお願いいたします。



※明日は更新します♪

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― 新着の感想 ―
鎧戸姉弟のwikiを作って事情説明しなきゃ成らんときは 「詳細はwebで!」ってやらないとww
お疲れ様です。無理のない範囲で頑張ってくださいね。 唯一患者でない戸塚さん。これからも、色々ショックな話が出てくるでしょうねw オタケくんの暴走は、はたして止まるのか!
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