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プロローグ

「これがワタシの求めていた魔法デス。それをどうしてあなたが否定する？私と同じ時間を過ごしたあなたが」

　「この3か月でワタシ達がしてきた事と、このワタシの魔法。いったい何が違うと言うのデスか？」

　博士の表情はいつもと違っていた。自信満々で得意げないつもの博士の姿は無く、泣き出しそうなその表情は、少し怒っているようにも見えた。

中央魔法研究所で作り上げた術式と、これまでの旅路が導き出した『術式を使わない魔法』を組み合わせた巨大な魔法陣は、今頃大陸を覆いつくしている事だろう。

　博士は、この魔法を使うことが世界のためになると信じている。

　白と黒のツートンカラーの髪をなびかせた女性は、その灰色の瞳で私を見ていた。私はこの瞳が好きだった。博士の決断の最後のピースとして、『私の答えを』待ってくれている。そんないつもの眼差しだった。

　思い返せば、初めて出会った日もそうだった。博士の中で理論・結論が揃った状況で、実際に私達が行動を始めるきっかけになったものは、いつも私の受け答えだったように思う。

　あの日々も正午の鐘が鳴っていた。こんな時に思い出すのは、他愛もない日常ばかり。

　私の次の言葉ですべてが決まるのだろう。明日の世界のあり方が変わってしまうのかもしれない。

　茶色がかった黒髪のポニーテールの少女は覚悟を決めて、その茶色の瞳で目の前の泣き出しそうな魔法使いを見つめ、右手を動かし、あの灰色の瞳を指さしてこう言った。

　「私があなたを止めようとするのは、その魔法がカッコ悪いと思ったからですよ。博士」

少女と博士が出会ってから100回目の正午を知らせる教会の鐘が鳴り響いた。