第6章 救出作戦
冷たい村上の声が陽太の背後に響く。
「お前、ここに来てしまった以上、もう戻ることはできない」
陽太は急いで振り返ったが、村上の目には冷酷な光が宿っていた。地下洞窟の祭壇に子供たちが縛られ、彼らの命が儀式の一部として利用されようとしているのは明らかだった。このままでは、子供たちが取り返しのつかない危険にさらされることになる。
「儀式を止めるつもりなら、無駄だ…もうすぐ始まる」
村上は不敵な笑みを浮かべながら、儀式が不可避であるかのように語った。しかし、陽太はその言葉を無視し、状況を冷静に分析し始めた。洞窟内には村上を含め、数人の村人が祭壇の周囲で動いている。陽太一人で立ち向かうのは無謀に思えるが、彼はこれまで数々の危機を乗り越えてきた。その経験が彼を突き動かしていた。
「まずは、村上を何とかしなければ…」
陽太は頭の中で手を考えながら、地下洞窟の構造を観察した。石壁にはところどころに古びた松明が灯されており、足元には苔が生えている。洞窟は広く、逃げ道も多いが、敵に気付かれれば一瞬で捕まる可能性もある。だが、陽太には一つのアドバンテージがあった。彼はまだ見つかっていない。
「今だ…!」
陽太はその瞬間を捉え、物陰に隠れながら一気に洞窟の中央へと進んだ。村人たちは儀式の準備に没頭しており、彼の動きには気付いていないようだ。息を潜めながら、陽太は慎重に祭壇の近くまでたどり着いた。
しかし、その時だった。洞窟内に低く響く太鼓の音が鳴り始めた。村人たちが儀式の合図を受け取り、動き出す。
「まずい、始まってしまう…」
陽太は焦る心を抑え、子供たちに向かって近づいた。4人の小学生は疲れ切っており、顔には恐怖が浮かんでいたが、まだ意識があるようだった。陽太は彼らに囁くように言った。
「大丈夫、今すぐ助けてあげるから…静かにしていて」
子供たちは弱々しく頷き、陽太の言葉を信じるしかなかった。だが、その瞬間、村上が祭壇の方に向かって歩み寄る気配がした。
「さて、始めようか…」
陽太は瞬時に決断を下した。彼は手早く子供たちの縛られた縄を解き、彼らを一列にして物陰へと導こうとした。しかし、その時、村上の視線が陽太に向けられた。
「何をしている…!?」
村上が叫び声を上げ、村人たちが一斉に振り返る。洞窟内に緊張が走り、儀式は一時中断された。陽太は子供たちを守るために前に立ち、全員を背後に隠した。
「僕たちはもう逃げられない。なら、ここでやるしかない」
陽太は意を決し、村上に対峙することを選んだ。村上の表情には明らかな苛立ちが浮かんでいた。
「お前一人で何ができる?」
村上が挑発的に問いかけるが、陽太は冷静だった。彼はこの村の暗部を見抜き、この状況に備えていた。村上の背後にある一つの古びた石像が目に入る。それは儀式の中心にある重要なものだと直感した。
「ここでやれることはあるさ」
陽太は突如として石像に向かって駆け出し、全力でそれを押し倒そうとした。村上は驚愕の表情を浮かべたが、遅かった。石像が大きな音を立てて倒れ、洞窟全体が振動した。儀式の中心が崩れ、村人たちが慌てて駆け寄る。
「このままでは…」
陽太は村上の怒りに満ちた視線を受けながら、再び子供たちを連れて洞窟の出口に向かって走り出した。村人たちは動揺し、追いかけてくる余裕もない様子だった。
洞窟を抜け出すと、冷たい夜風が陽太の頬を打った。彼は疲れ切った子供たちを連れ、安全な場所までたどり着いた。そして、警察に連絡を取り、この異様な儀式について通報することに成功した。
村上とその仲間たちは捕まり、村は少しずつ正常を取り戻し始めた。しかし、陽太の心にはまだ解けていない謎が残っていた。
「これで終わりじゃない…まだ何かが、隠されている」
そう感じた陽太は、新たな手掛かりを追い求め、次なる行動を決意するのだった。
続く…