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第4章 影の囁き

村上修一の言葉を胸に刻みながら、陽太はその日の夕暮れ、神社の裏手に広がる森へと足を運んでいた。村上が何かを隠していることは明らかだったが、彼の口から直接聞き出すのは難しい。そこで、陽太は独自に儀式に関わる手がかりを探すため、かつて儀式が行われたという森へ向かうことを決意した。


森の奥に進むにつれて、空気が一変した。風の音が途絶え、木々の間に張り詰めた静寂が漂う。その異様な静けさに、まるで森全体が何かを隠しているかのように感じられた。陽太は周囲を警戒しながら、慎重に足を進めた。


「ここで、何があったんだろう…」


心の中で呟きながら、陽太はふと一つの奇妙な石碑を目にした。苔むした表面には古い文字が刻まれており、何百年も前に作られたもののようだった。その石碑の周囲には、かつてここで何かが行われた痕跡が残されている。


「これは…儀式に関わるものか?」


陽太は石碑に近づき、指先でその文字をなぞった。その瞬間、彼の頭の中に不意に古い記憶が蘇る。何度も転生を繰り返してきた彼の意識の中には、過去の出来事が断片的に蓄積されている。これまで忘れていた何かが、今、再び目を覚まそうとしている。


――古い儀式。子供たちを使った供物の儀式。村を守るための血の契約…。


陽太は息を飲んだ。失踪した子供たちは、ただ行方不明になったのではなく、何者かによってこの儀式に利用されているのだ。


「やっぱり、あの儀式が関係している…」


思いがけずその真相に近づいたことで、陽太の胸は焦燥感に包まれた。これ以上、犠牲者を出さないためにも、一刻も早く事件を解決しなければならない。そして、村の人々に何が起こっているのかを知らせる必要がある。


しかし、石碑の前で立ち尽くしていたその時、背後から不意に気配を感じた。陽太は振り向くと、そこには村の子供たちが立っていた。彼らの目はどこか空虚で、生気のない表情をしている。


「君たち…?」


陽太が声をかけると、そのうちの一人がゆっくりと口を開いた。


「…私たちを、救って…」


その言葉を聞いた瞬間、陽太は目の前に立つ子供たちが失踪した子供たちであることに気づいた。しかし、彼らの姿はどこかおぼろげで、現実に存在しているようには見えなかった。


「これは、幻影…?」


陽太は混乱しつつも、冷静に状況を分析しようとした。すると、子供たちは陽太に向かって一歩一歩近づいてくる。そして、その顔には苦しみと絶望が浮かんでいる。


「助けて…お願い…」


その声が響くたびに、陽太の胸に深い悲しみと罪悪感が押し寄せてくる。彼はこの村に来る前、転生を繰り返してきた無数の生の中で、何か大切なものを失ってきたような気がした。


「僕に、何ができるんだ…?」


陽太は自問しながら、彼らを救う方法を必死に考えた。だが、その時、森の中に再び冷たい風が吹き始め、子供たちの姿は霧のように消え去った。


「待って…!」


陽太は手を伸ばすが、そこにはもう誰もいなかった。空には灰色の雲が広がり、まるでこの村に降りかかる運命のように、重々しい空気が辺りを包み込んでいた。


***


翌日、陽太は再び学校へ向かうが、昨晩の出来事が頭から離れなかった。失踪した子供たちが儀式の犠牲となり、何かに囚われているのだとすれば、どうすれば彼らを救うことができるのか?


学校の帰り道、陽太は翔太に話しかけた。


「ねえ、昨日また神社の近くに行ったんだ。そこで…消えた子供たちを見たような気がする」


翔太は驚いて足を止め、陽太を真剣な眼差しで見つめた。


「本当に?それってどういうこと?」


「彼らは、たぶんまだこの村に囚われているんだ。でも、普通の方法じゃ見つけられない。何かが彼らを隠しているんだ…儀式か、それに関わる力がね」


翔太は不安げにうなずいた。


「でも、どうやってそんなことを止めるの?」


陽太は答えを出すことができず、ただ黙り込んだ。この事件にはまだ解き明かさなければならない謎が多すぎる。だが、村の人々が知らない何かが動いていることは確実だ。


陽太は決意を固め、今夜もう一度森に戻ることを決めた。儀式の謎を解き、子供たちを救うためには、自分自身がこの事件の核心に迫るしかない。そして、そのためにさらなる危険が待ち受けていることも覚悟していた。


「僕が解き明かしてみせる…必ず」


その夜、陽太は再び神社へと向かい、今度こそ村に隠された真実を暴く覚悟で、深い森の奥へと足を踏み入れていった。


続く…

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