第1章 静かな村に潜む異変
雨宮陽太は、新しい学校へ向かう道すがら、村の異様な空気を感じ取っていた。小学校一年生として転校してきたばかりの彼だが、その中身は幼さを超えた深い知識と数多の記憶を持つ転生者である。この小さな村での生活は、数え切れないほどの生の中での新たな始まりに過ぎないはずだった。しかし、村全体に漂う不穏な雰囲気は、陽太の鋭敏な感覚を刺激していた。
「ここも、何かが違う…」
村は一見すると平和で、どこにでもある田舎の風景が広がっている。青々とした田畑、遠くにそびえる山々、そして穏やかに流れる川。だが、そんな風景の裏側には、誰にも見えない何かが潜んでいるように感じた。陽太の耳には、村の住民がささやく噂話が届いていた――児童の連続失踪事件。ここ数ヶ月の間に、4人の子供がこの村から消えているという。
警察は調査を続けているものの、何の手がかりも見つかっていない。村は不安と恐怖に包まれ、住民たちは互いに疑心暗鬼になっていた。陽太はこの村での生活に馴染むふりをしながら、心の中でこの事件に強く引き寄せられていく。
「どうして子供たちが次々と消えるんだ…?」
陽太の過去の転生の経験から、無作為に見える事件には必ず何かの法則や原因が隠されているはずだと知っていた。そして、この事件も例外ではないと確信していた。
その日、陽太は新しいクラスメイトである黒崎翔太と一緒に帰宅の途中、村を見渡しながら話をしていた。翔太は陽太が転校してきてからすぐに仲良くなった、快活で無邪気な少年だ。しかし、事件のことになると、どこか怯えた様子を見せていた。
「陽太くん、怖いよ…また誰かがいなくなるかもしれないって、お母さんが心配してるんだ」
翔太の言葉に、陽太は軽く微笑みながら答えた。
「大丈夫。何かあったら僕がなんとかするよ」
陽太の言葉には、自信と決意が込められていた。転生を繰り返してきた彼には、普通の小学一年生には持ち得ない力と知識がある。だが、それを表に出すことはできない。彼は、周囲に気づかれずに事件を解決し、村を救わなければならなかった。
その夜、陽太は村の中心にある神社の近くを歩いていた。風が静かに木々を揺らし、夜の冷たい空気が彼の頬を撫でる。神社の前には、村の長老たちが集まり、失踪事件について話し合っているようだった。陽太は足を止め、彼らの会話に耳を傾けた。
「このままでは、次は誰が消えるかわからん…」
「やはり、あの儀式を再開するしかないのか…?」
儀式――その言葉が陽太の耳に残った。何かしらの古い慣習や信仰が、この村の過去に関わっているのだろう。陽太は、事件が単なる失踪事件ではなく、村の歴史や隠された闇に繋がっていると確信した。
「何かがこの村を取り巻いている…それが、子供たちを連れ去っているのかもしれない」
翌朝、陽太は決意を新たにして学校に向かった。失踪事件の真相を解き明かすために、これまでの経験と知識を総動員して、この村の秘密に迫るつもりだった。そして、誰にも気づかれないように、次の手がかりを探し出さなければならない。
まだ誰も知らない真実が、ゆっくりと彼の前に姿を現そうとしていた。
続く…