第8話 1
謁見の間で、バトルアーマーで完全武装した元傭兵達――<黒熊の爪>騎士団のみんなを前に、わたしは玉座に座らされていた。
玉座の左には、わたしと同じくバトルスーツ姿のステラ。
わたしのスーツはロザリアによって、バイザースカートが膝丈に直されたのに対して、ステラのはミニスカートのままだ。
右側にはロザリアが、わたしと同じデザインの赤いバトルスーツを纏って立っている。
騎士団の後には汎用端末器の上位ナンバー二十人に加えて、強い個性を獲得しているハナちゃん、ロミちゃん、そしてローザちゃんが並んでいた。
他の八十人は、先にこの城の住民となった八人の追放者達と共に、先程の現象――ステラが言うには騒換共鳴という事象なのだそうだけど――の説明を移住者達にするために城下を巡ってもらっている。
フェルノード夫妻は五人の汎用端末器を護衛に、他国を訪問中で留守だ。
ステラは腕組みして広間に集まったみんなを見回して。
「さて、アンタらに完全武装を指示したのは、他でもありません。
――敵が出現しました」
そう告げた。
途端、騎士団のみんなが驚きの表情を浮かべる。
「――あの姐さんが敵っつったぞ!?」
「……竜さえトカゲ扱いの姐御が……」
スキンとモヒカンが顔を見合わせて囁き合う。
騎士団でも上位の戦闘力を持つふたりは、ステラの強さをよく理解しているからこそ、驚きも強いのでしょうね。
「……姐さんが敵と呼ぶという事は、与えられた知識の――大銀河帝国で言うところの敵って事で良いんですかい?」
スカーの問いに、ステラはうなずく。
彼はゾル様が来た時に一緒に話を聞いていたから、アレの脅威はよく理解している。
だから、ステラが肯定したのを見て、顔を引きつらせた。
「ええ。先程の事象――騒換共鳴ってーんですけどね、アレは連中がユニバーサル・スフィア――霊脈に接触した時に起こる現象なんですよ」
と、ステラは先程の現象についての説明を始める。
人が持つ魔道器官――ローカル・スフィアが発する個々の波動。
魔法とは、その波動に意思を伝えることで世界を書き換える事象で、波動そのものは魔法として具現していない時も常に発せられているのだという。
そして、その波動によって編み奏でられるものこそ――霊脈。
「敵――EX-Tってのは、波動を嗅ぎ分けて喰らう為に、ローカル・スフィアと似て非なる器官を有しています」
過去、人類会議同盟軍は敵の性質を明らかにする為に、EX-Tの捕獲を試みた事があるそうで。
結果、本体そのものの捕獲はできなかったものの、数体の眷属器を捕獲、加えて何体かの死骸を持ち帰る事ができたのだという。
ステラが告げたその器官は、ローカル・スフィアの波動を中和、あるいは反転させる性質を持っていたそうで、大銀河帝国の賢者委員会を含む、人類会議の知的諮問委員会はこれを<騒臓>と呼称する事を決定した。
「連中の<騒臓>ってーのは、ローカル・スフィアを中和する性質上、自身らが発する波動もまた中和・相殺されます」
対EX-T戦で、ハイソーサロイドが決戦力となるのは、発する波動が人属より強く、EX-Tの発する波動を押し返す事ができるからだそう。
「そして、連中が霊脈に振れた時に起こる騒音事象こそ騒換現象であり、先程、アンタらが経験したのは、隣接するリージョン・コラムで、それが起きた事による反響で騒換共鳴と言います」
――リージョン・コラムというのは、ユニバーサル・スフィアを用途や扱う事柄によって区画分けしたものの事を言うようなんだけど、整備されていないこの星のユニバーサル・スフィアは、人の意識がそうさせているのか国ごとに大雑把に分類されているのだという。
「……ゾル先生らが昔そうだったみてえに、外から嗅ぎつけられたって事ですかい?
だが、ゾル先生らは、そうならない為に対処して来たんでやしょう?」
スカーの質問に、ステラは首を振って見せる。
「今回の件は、この惑星上――過去に地中に潜って休眠状態にあった眷属器――位置的にアルマーク王国地下に眠る奴が引き起こしたものです」
「――目覚めたってえんですかいっ!?」
「それも最悪の形で。
――どういう事なのかは調査中ですが、敵は恐らく眷属器から本体に成っています」
騒換共鳴が起こるほどの騒換現象を引き起こせるのは、眷属器ではありえないそうで。
だから、ステラもゾル様も敵は本体だと推測したのだという。
「現在、隠密探査器で現地を観測しようとしているのですが……どうも近隣のものは破壊、あるいは活動停止しているようなんですよねぇ。
――生きてる子は……あ、居ましたね。
映像を回させましょう」
と、ステラが手を振ると、わたし達の前と騎士団のみんなの前、背中合わせに二枚の大型ホロウィンドウが開く。
映し出されたのは、アルマーク王都の城壁の外――上空からの遠影で。
「――これは……」
わたしは息を呑んで映像を見つめたわ。
隣でロザリアも顔を真っ青にしている。
……ひどい光景が広がっていた。
かつて王城があった場所には深く巨大な穴が口開き、王城は跡形もなく消え去っていた。
あちこちの家で火の手が上がり、道には意識を失くした多くの人々が倒れている。
そして――
「――なんですのっ!? あの怪物達はっ!」




