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ファンタジー世界で王子に騙され、追放されたわたしが銀河大戦の最終兵器を拾っちゃいました。 ~廃棄処理された超兵器による、ご主人様救済計画!~  作者: 前森コウセイ
巫女に守られし聖なる泉は、悪意に穢されて

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第7話 6

「……って、そうじゃなく!」


 ようやく頭が回って来たわたしは、ベッドから降りてステラの元へ向かう。


 ステラを拘束するワイヤーは、もがけばもがくほど締まる軍用拘束式で結ばれていたわ。


 これはきっと、手先の器用なハナちゃんの仕業ね。


「ご主人様ぁ……うぅ、おぃおぃおぃ……うぇげふっ」


 ワイヤーを解く間も、ステラは本気で――えずくほどに嗚咽(おえつ)を漏らしていて。


「っと、よし解けた。

 もう、ステラ。そんなにわたしと一緒に寝たかったの?」


 わたしはステラを抱き上げ、そう訊ねたわ。


「そりゃもうっ! いつだってご主人様とご一緒したいと願うのは、仕える者(アーティロイド)の本能みたいなもんなんですよぅ!

 なのにご主人様ったら、いつもいつもはぐらかして……

 三百年の孤独を癒せるのは、ご主人様のぬくもりだけなんです~!」


 わたしの胸に顔をグリグリ押し付けて、ステラは強く訴える。


「……その言い方はズルいと思うわ。

 別にね、ステラがイヤではぐらかしてたワケじゃないのよ?」


「でも、ハナロミとは一緒にお休みじゃないですか! 専属だからってえこひいきですかっ!? 私はこんなにもご主人様を想っているのにっ!」


「いやぁ……二人には、毎朝起こしてもらってて知られちゃってたし……」


「――秘密の共有だとぉ!? ご主人様の忠実な下僕の私を差し置いて!?」


 顔をあげて興奮気味に、ハナちゃんロミちゃんを睨むステラ。


 というか、二人ともなんかエスカレートして来てない?


 さっきまでぽかぽかと微笑ましい叩き合いだったのに、ちょっと目を離してる間に、<黒熊の爪>のみんなの模擬戦みたいな動きしてるんだけど……


 身体強化しないと、速すぎて目で追えないくらい。


 ええと、いまはふたりの事は置いておこう。


「あのね、ステラ。わたし……実はすごく寝相が悪くてね?」


「……え?」


 わたしの告白に、ステラは首を傾げる。


「昨夜も盛大に暴れてたの~」


「ハナは休眠状況における襲撃対処――回避訓練の一環だと思うようにしてます~」


 と、ハナちゃんとロミちゃんは、急にケンカをやめて、そうステラに説明し始めた。


「うぅ……」


 恥ずかしさにステラを抱きしめる両手に力が入る。


「ご主人様の寝相が悪い? まっさかぁ」


 ステラは信じられないというように鼻で笑い、肩を竦めたわ。


「……ステラ、現実を見るの~」


「ご主人様の上半身がベッドから落ちかけてたのを、ステラも見てたはずです~」


 ……今日はそんな風だったのね。道理でお腹が引きつるような感じがするわけだわ……


「は? あれはご主人様なりの訓練でしょう? 睡眠時まで身体能力向上に努めるなんて、素晴らしいじゃありませんか!」


「――本気でそう思えてるなら、いっそ思考領域の初期化をお勧めするです~」


「もしくは視覚器(アイセンサー)がぶっ壊れてる可能性もあるから、再構築するの~」


 二人はたぶん、ステラを罵倒してるつもりなんだろうけど……


「もうやめて……わたしの寝相が悪いのが、全力で肯定されてる……」


 自覚があるだけに、二人の言葉はわたしにも深く突き刺さるわ……


「つまり私のお願いを、いつもはぐらかしてたのは……?」


「恥ずかしいから、知られたくなかったのっ!

 それに二人と違って、いつものステラだと大きさ的に避けられないでしょう?

 だから、ね? ステラだからイヤとかそういうのじゃなかったのよ!」


「じゃ、じゃあ……この愛玩躯体(プリティ・ボディ)なら……?」


 恐る恐るといった風に、ステラは上目遣いでわたしの顔を覗き込んできたわ。


「もうバレちゃってるし。ステラが良いなら構わないわ」


 セイノーツのお屋敷で暮らしてた時から、ぬいぐるみに囲まれて眠るのって、ちょっぴり憧れだったのよね。


 クレリアと違って、わたしはぬいぐるみなんてひとつも持ってなかったから……


 ハナちゃんロミちゃんのお陰でそれが叶ったのに、さらにこの姿のステラまで加わるなんて、あの頃からは考えられない……夢のような話だわ。


 途端、ステラは両目を一杯に見開いて、歓声をあげる。


「ひゃっふ~! 今夜からときめき甘美な夜(スウィート・ナイト)だぁっ!」


 両手をバンザイして、涙まで流して喜ぶステラ。


「……おい、ロミよ。今夜から回避訓練に加えて、あの狂化機種(バーサーカー)性獣(ラヴ・モンスター)にならないように監視する任務が追加です~」


「ああ、ハナよ。より躯体性能を底上げする必要があるかもなの~」


 ……二人が躯体を改良したのって、わたしのひどい寝相から逃れる為とか言わないわよね? ね?


 怖くて訊けないっ……


 と、そこへ。


「さあさ、お話もまとまったところで、リーリア様は身支度なさってくださいまし。

 皆様、すでに食堂にお集まりだそうですわよ」


 ローザちゃんが両手をぽむぽむ打ち合わせた。


 食事は城のみんなで、大食堂で一緒に取ることにしてるんだ。


「あ~、待たせちゃ悪いね。先に食べててって伝えてくれる?」


「かしこまりましたわ」


 わたしのお願いを受けて、ローザちゃんは大食堂へと遠話を繋ぐ。


「じゃあ、ロミはお嬢の服を用意するの~」


 ロミちゃんがクローゼットに向かって駆け出し。


「ご主人様~、座って座って~。髪を整えます~」


 わたしはハナちゃんに手を引かれて、鏡台に座らされる。


「じゃあ、わたしは常用躯体に戻りますね。この躯体はベッドにでも置いておいてください」


 ステラはそう告げて、片手をあげる。


「では、またあとで――」


 そう言いかけたところで。


「――そうそう、ステラ……」


 ローザちゃんがステラを呼び止めた。


「ロザリア様があなたに()()()()があるそうですわ」


 それはそれは可愛らしい微笑みを浮かべるローザちゃんに。


「――うっ……ぐぅ……ええい! 今夜の勝利が約束された今の私は無敵です! 受けて立ちますよ!」


 そうしてステラは、わたしの腕の中でくたりと動かなくなって。


 特注品だというステラの愛玩躯体(プリティ・ボディ)を大切に鏡台に座らせると、わたしは背後で踏み台に乗って髪を整えてくれているハナちゃんに声をかける。


「ハナちゃん、ちょっと急いでもらえる? ステラを助けに行ってあげなくちゃ」


 その言葉に、ハナちゃんは苦笑して肩を竦めたわ。


「ご主人様は本当、ステラに甘いのです~」

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