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道中、あやかしの街

毎週水曜更新!他の作品も同時進行で書いているので、一方に熱がこもってしまった場合、もしかすると更新頻度が落ちることもあります。




 魔女の呪いによって、“永遠の命”をもらってしまうレイ、それから半世紀ほど何もせずに退屈な人生を送っていて、ある時各地を巡る旅を始めた。


 旅を続けていると、人間の住まわないサイバーパンクの国で主を失ったアンドロイドのゼロに出会う。


 ゼロもまた、機械として半永久に生きることができるのだった。




 本作は長い年月、続く旅の非日常的な世界の冒険譚である。






キャラクター




レイ


人間。25歳のときになんの因果か、魔女に呪われてしまう。呪われてから軽く50年は生きた。このまま変わりゆく世界を呆然と眺めるのも、違う国での旅も暮らしもまた良いものだと思い、ある日旅を始めることに。それ以降は永遠の時を生きる不死の冒険者として旅をしている。




ゼロ


アンドロイド。全属性持ちかつ世界の知恵を備えたの最強アンドロイド。未知のウイルスによって人間が死んでしまう。その影響で主人を失って、瞳の中から光が消えてしまった。それから主人のいる土地で呆然と生きていた。ある日、不死身と化したレイと出会い、共に旅をすることに。


レイへの忠誠心が高く、レイがいないときは口が悪くなる。




アンナ・バレンタイン


全諸国の冒険者ギルドを統括するギルドマスター。過去は勇者として冒険していたが、若くして冒険者から身を引いた。今は冒険者の育成に努めている。


一見幼い少女のようだが、かなりの切れ者で何かあれば自分が率先してみんなの盾となる覚悟を持ち合わせている。




シン・ウォロ


剣術が得意な冒険者。強くぶれない志を持っており、目の前のことにとらわれず、冷静に考えることができる。珍しい幻影魔法無効持ち。仲間を失ったが、助けられたことで前向きになる。レイに振られたことで、チェルシーのパーティーに加入することになる。




チェルシー・ジョナス


光魔法を得意とする魔道士。ヘマをしやすく、その度に他の仲間から支えられてきた。Sランクメンバーの中で唯一のAランクだが、他のSランク冒険者に負けず劣らずの戦力があり、近々Sランク試験に挑むつもりでいる。

 次の目的地に着くまで、道中で魔物の討伐や周辺の村や街で依頼を引き受けたりなどしていた。


「レイお姉ちゃん!」

「もう行っちゃうの〜?もっといてよ……」

 村を離れようとした日、村の子供たちから名残惜しそうに冒険服の裾を掴まれた。

「ごめんね、この世界には君たちみたいに助けを必要としてる人がたっくさんいるから。もう行かないといけないんだ。」

 少ししゃがみ、子供たちと視線を合わせると、優しく少年の頭を撫でて微笑んだ。

「そっか……。また会える……?」

 しゅんといかにも寂しそうにこちらを見てくる可愛げな少年。

「そうだな〜、君が大人になって、素敵なお嫁さんでも見つけて幸せに暮らし始めた頃にね…♪」

「えぇ〜、そんなに〜?お姉ちゃん、その頃おばあちゃんになってる?」

 ニシシッといたずらっ子のように微笑むと、少年は頬をむうっと膨らませた。

「……私はこのままの姿で会いに来るよ。そうだ、じゃあ、お姉ちゃんの宝物あげる。」

 そう言って、レイは自分の冒険バックから小さな鳥の羽を取り出した。

「わぁ、綺麗……!」

「これはね、天界に生息してるヒールメロディバードの羽なんだ。風が吹いているときにそっと羽が揺れたとき、心の疲れを癒やしてくれるんだよ。」

 優しく微笑むと、そっと少年の手に握らせた。

「じゃあね。お姉ちゃんたちはもう行かないと。」

 そう言って立ち上がり、踵を返してまた歩き始める。去り際に見えなくなるまで村の人たちが見送ってくれた。




「良かったのか。レイの宝物だろ?確か、最初の冒険の始まりときに、ヒールメロディバードが落としていったっていうものだろ。」

 村が見えなくなるまで歩いたところでふとゼロがそう話す

「いいよ。きっと、あれはあの子の一生の宝物になるだろうからね。羽のひとつひとつで奏でる音色は違う。ゼロも持ってるでしょ?それで十分。」

「そうか。」

 にっと微笑むと、ゼロはどこか照れくさそうな表情をしていた。


「次の街は妖〈あやかし〉の住む街、妖舞街だ。和の国、ミヤビ。国には獣人が住む街、ビーストシティ。もちろん人間が住む想桜街、そして妖舞街の3つの街で成り立っていて。1番その中でも1番栄えてるところだな。」

「妖舞街か、確か幻想的な大きな街だよね。1年中桜が咲いていて……。食べ物は和風で。楽しみだな〜♪」

「クッ……、ほんと食べ物のことになると夢中だな。あんま羽目外すなよ。」

 妖舞街のことを考えて真っ先に食べ物のことを思い出してしまい、ククッとゼロに笑われてしまう。

「分かってるって〜♪」

 楽しそうに微笑んで、私達は妖舞街に辿り着いた。



□□□



 ついたころはすっかり夜であった。けれども、街の中は妖しげな琴の音やお祭り騒ぎのような雰囲気に醸し出されていた。

 街灯は提灯があり、異形の者から人間に近い者まで、たくさんの妖や人間たちが歩いていた。


「……お久しゅうございます。レイ殿。我らの王、酒呑童子様がお待ちでございます。」

 気配もなく桜の木の下に現れた。見た目は幼い少女で熊の尻尾と耳が生えていた。

「っ!」

 咄嗟にゼロが私の前に立ち、警戒体勢に入った。

「……大丈夫、あのお城に案内してくれるだけのようだから。」

 と、遠くの目の前に見える和風の城を指差す。

「だが……。」

「平気だって、敵意はない。歯向かえば強制的に攫われる。……あなたは熊童子ね。兄のところに案内してくれると捉えていいかな?」

 ゼロをなだめると、熊の少女に話しかけた。

「はい。その通りでございます。近々こちらに参られるレイ殿とそちらのからくりを連れてくるようにと命じられました。」

「……2人一緒でも構わないよね?」

 少し殺気を出したまま尋ねると。熊童子のピクリと眉が動く。

「……分かりました。ご一緒にどうぞ。」

 そう言うと、桜の花びらが散り、3人を包み込む。花びらが落ちると城の前まで辿り着いていた。


「こちらでございます。」

 そう言われ、中に案内される。ゼロは私の手をぎゅっと握り、周囲の警戒をしていた。

 中に入るとせわしなく動き回る妖たちから冷たい視線を向けられる。普段は人間を中には入れることが早々ない。そのためだろう、初めて私の姿を見る妖たちはこちらを見てひそひそ話していた。


「………。」

 不満そうにゼロがその様子を見ているが、気にせず歩いていく。少し歩いたところで広い部屋に案内された。


 重臣と思われる妖たちが顔を隠した上で、座ったまま部屋に入った私たちを見ている。余所者扱いをしている嫌な視線だ。

 その中でもどかっと畳の上に座り、こちらを見下すように見ている妖がいる。鬼の角が生えた妖。酒呑童子だ。

「久しいな。レイ。50年ぶりか?」

「そうなるかな、兄貴ほど忙しくはないですからね。」

「可愛い妹の呪いを解く術が見つかったと話してもか?」

 “兄”そして“妹”。初めてこちらの関係性を聞く妖たちはざわざわしていた。

「静まれ。」

 酒呑童子がそう声を張ると、一気に静寂になった。

「……嘘ですよね、その見つかったというのは。王都の最上級の光の魔法使いでも無理でしたもの。」

「……ほお。なぜそう思う?」

「この世界の理までもゼロが全てを知っているから。裏の暗躍までも干渉できる。常に更新される情報からこの呪いを解く術はないと知っているからよ。」

「たった数年だろう、お前たちは。そいつの脳内にでも干渉したのか?出来ないだろ?どこにその証拠がある。」

「“血の誓い”、ご存知よね。主の血を10滴ほど飲ませるか身体に身につける物に塗るかする。すると、主とその者の内部まで干渉できる。代償は主の命尽きるまで。まあ、私は万が一のことがない限り干渉することは使ってない。」

「ふははっ、そうか。お前たちなら何万年もの時を共にできるのか。」

 兄は大きく笑い、納得したようにこちらを見ている。

「……さて、君は聞き耳立てるのもいい加減にしたらどうかな。それとも、兄貴の仕業かな?」

 天井に向かってゼロの剣を気配のある方に投げる。すると、穴が空き、背中に黒い羽の生えた天狗の少年が落ちてきた。

「……くっそ、この醜女!おれ、ちゃんと気配消してただろ!!なんで分かった!?」

 天狗の少年は起き上がると真っ先にこちらに突っかかってきた。

「……んー、ゼロが天井ばかり気にしていたからね。」

「ああ。この中にいる妖たちに上手く勘付かれることなく潜んでいたようだが、生きている者の呼吸音は消そうと思っても難しい。俺のようにからくりでない限りは、な。それとレイは醜女ではない。」

 自分の剣を回収すると、ゼロがギロッと睨むと共にとてつもない殺気を放つ。それはこの場にいる妖たちが死を直感するほどの殺気だった。

「……ただのからくりかと思っていたが、そうか、相当な手練のようだ。何も気配がないので驚いた。」

 そっと兄がこぼすと、天狗の少年は酒呑童子に向かっていた。

「申し訳ございません。失敗に終わりました。」

「いや、想定内だ。レイならば必ず気付くと思っていたからな。どうだ、こいつを手下にする気はないか?レイ。」

 にっと笑みを浮かべると、こちらの反応を見て楽しんでいるようだった。

「冗談ならば死ね、クソ兄貴。」

 殺気を放ち、ギロッと睨んだところで、周りの妖たちから警戒を向けられ、周りの妖たちが一気に攻撃体勢に入る。

「レイに敵意を向けるのはやめろ、一瞬でお前たちは塵になる。こいつの力量を知らんのか。」

「お言葉ですが、この娘にそのような力があるとは思えません。」

 重臣の一人がそう話した。

「…俺が本気でやりあったところで勝るか五分五分だ。レイだけでも難しいというのに、そのゼロというからくりも含めると勝算はない。そのくらいなのだ。」

 兄のその言葉を聞き、重臣の妖たちはそれぞれがむむっと押し黙り大人しく座る。


 だが、一人だけ、攻撃体勢にも入らずにレイを見ては楽しげに笑みを浮かべている狐の妖がいた。


「……はあ。そろそろ本題にどうぞ、こちらも暇ではないので。」

「ふははっ、そうだったな。……この頃魔物の進行が進んでいるのは知っているだろう。それがこの国にも影響かてきていてな。街外れのところでは家が壊され、妖たちは住処を追い出され、魔物たちがそこに住み着くようになった。それがもう15件は報告されている。こちらでも片付けているが、それに対処できる相当の手練が足りず追いつかない。報酬は弾もう。何なら商人ギルドに融通が利くようにしてやってもいい。これからの旅に有利だろう。食品も安価で購入できる。」


 少し悩んだ後、すぐに答えは出た。

「……その話、受けましょう。一人連れて行ってもいいかな?」

「…一人?誰だ。」

 真っ直ぐに兄に向かって話す。怪訝な顔をする兄を置いて、話を進める。

「さっきからこっちを楽しそうに見ている狐!お前ならば、ついてきてくれるだろ?」

「……姫様の望みであれば、何処へでも。」

 そう言ってレイに頭を垂れる狐の妖〈妖孤〉がいた。その妖孤は重臣の中でもかなりの高い位に就いていたらしく、「妖孤様が頭を垂れるとは…」などの声でざわついていた。

 妖孤はレイと幼少頃から共に暮らしていた。レイに対して忠誠心がとても高く、レイが姿を消したとき兄の側近に抜擢されたが、レイに会えたら真っ先に付いていこうとしていた。

 妖孤に対してゼロは警戒していたが、何とかなだめて、兄の許可ももらってそのまま部屋を出た。



「いやぁ、また姫様とご一緒できるとはな〜♪幸せやな〜♪」

 訛りがありながらも、もふもふとした尻尾と耳をぴょこぴょこ嬉しそうに動かす。

「……てめぇ、近すぎなんだよ。離れろや。」

 ゼロ距離も同然だったためか、とうとう我慢できなくなったゼロに狐の妖は離される。

「……嫉妬とは見苦しいな〜?姫様のお世話もしとったんは俺や。呪いかけられて、姿消す25のときまでずーっと俺がお慕いしとったんや♪自慢の姫様やで。」

「へぇー、じゃあ今のレイに対しては知らねぇのか?」

「なんや、喧嘩売ってんのかいな?」

「こら、ゼロもスイもいい加減に……」

 喧嘩腰になり、バチバチと火花が飛ぶ中、なんとかなだめていた。


 落ち着いたところでゼロが話を切り出した。

「それで、どうすんだ。泊まるところとか決めてねぇよな。」

「それでしたらご安心を。俺が宿泊先を抑えとるので…♪この辺りでも一等地の良い宿なんで、姫様もきっと気に入ると思うわ。」

「おお、じゃあそこまで案内してもらおっか。」

「ほんなら、お任せをっ!」

 満足げに語るスイの耳は嬉しそうにぴょこぴょこと動いていた。


 宿につくと、部屋で和風の料理を堪能して、のんびりと食べてから温泉に浸かっていた。

「はぁ、最高……。」

 とふうっと一息ついてぼんやりと上に見える星を眺めていた。


「姫様、大丈夫ですかー?ご一緒しましょか〜?」

「おい、変態狐。あ?次やったら殺すぞ。」

 風呂場の外にいるスイがそう話しかけてくる、すると間髪入れずにゼロの低い声と共に気配がなくなった。恐らくズルズルと部屋の中に戻されたのだろう。


 少しして、上がって着物姿で濡れた髪をタオルで拭いて。入れ違いにスイとゼロが一緒に向かった。風呂場からも喧嘩腰の声が絶えなかったが、気にせずに外の風に当たって休んでいた。ぼんやりと外の景色を見て、懐かしい記憶を思い出す。


(……何年経ってもここの景色は変わらない。……鬼神の妖と人間の間で産まれた兄は鬼となり、私は人間になった。数年で王と呼ばれ、私は姫と呼ばれる。25の頃、呪われて不死となってしまい周りに距離を置かれた。私はそれが嫌でここを抜け出して、ゼロに出会った……。)


 ぼんやりと外を眺めながら、とてつもない孤独に襲われていた。

「長くそこにいると冷えるぞ。」

 いつの間にか上がってきたゼロにそっとゼロの羽織を肩にかけられ、そっと優しく撫でられた。

「……もう上がってたんだ。」

「おう。狐野郎はのぼせてダウンしたけどな。」

「えっ、大丈夫なの?」

「姫、様……。」

 とふらふらとレイのもとまで来る。レイが自分の膝をぽんぽんと叩くと、「ほんまに?ええの?」と言ってスイは嬉しそうに膝枕されていた。

 レイは優しくスイのさらさらの髪を撫でながら、街の景色を眺めていた。



□□□



 1時間ほど経つと、レイはこくこくと船を漕いできてしまって、ゼロにもたれかかってしまった。


「ほんなら、俺は退けんとあかんな。」

 優しくレイの頬を撫でては、動けないゼロの代わりに布団を敷き始めた。

 その間もレイはすやすやと寝息を立てながら眠っている。


(ここで何があったは詮索しないでおくが……それにしても、レイの寝顔はいつ見ても本当に可愛いな。)

 レイの寝顔を眺めながら、ゼロはふっと優しい笑みを浮かべて、そっと柔らかい頬を撫でて様子を見ていた。


「あんま姫様に近づいたらあかんで。」

「残念だが、姫と臣下の立場じゃねぇから。俺はいくらでも近づいて良いんだよ。」

 フッと勝ち誇ったように笑みをこぼすと、スイはカチンときたようで。わなわなと震えていた。

「……んん…」

 バトルが始まるかと思われた手前、レイが寝言を話した。そのおかげが、新たに戦いが起こることはなくなった。


レイを寝かせて、その日は川の字になって3人は眠った。

読んでいただきありがとうございます。


3話目ですねー!お兄さんめちゃくちゃイケメンならいいなとか思いながら書いておりました。

レイの過去については追々辿っていくとしましょ!!

妖たちのいるのは想桜町なのですが、妖と聞くと日本の妖(鬼や天狗や妖狐など)を想像してしまい、日本といえば桜と思いましたので、想桜町になりました。魔法とは違った原理(妖力)で攻撃を生み出すと考えてます。

魔術があれば、妖術もある!みたいな!(笑)

そして、個人的に忠誠心の厚いスイくん好きです。訛り可愛いですね……書いていて楽しい部分でした。実際にいたら尻尾がもふもふふわふわしているのでしょう……惹かれますね……。


想桜町篇、もう少し続きます。

ぜひ、来週の更新をお楽しみに!好評などでしたら、週2での投稿も視野に入れてます。

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