表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

1988年上野駅中1男子行方不明事件

作者: 吉良 純

1988年夏、当時中学1年生だったJ君は、鉄道好きの友人T君に誘われて上野駅に来ていた。


目的は当時臨時で走行していた『スーパーエクスプレスレインボー』という列車の写真を撮る事だとT君がJ君に前もって話していたんだ。


上野駅着いてしばらくすると、ホームにそのレインボー列車が到着した。T君は早速カメラでカシャカシャ。J君は正直、レインボー列車どころか鉄道そのものに全く興味がなかった。ただただT君が写真を撮る様を暇そうに見ていた。


T君はレインボー列車を撮り終えると今度は、当時まだ走行していた寝台列車(ブルートレイン)が上野駅に到着したので、それを撮り始めた。


J君は暇すぎて喉が乾いてしまった。


それでT君に対して「ジュース買ってくるからここらへんにいてくれ」と言った。上野駅ってのは構内が広くて複雑なんだ。日本で5指に入るんじゃないかな。こんな駅ではぐれたらまだ携帯電話もなかった時代、大変な事になる。


だからJ君は念を押してT君に、俺が戻るまでここを離れるなと言ったんだ。


ところがやっぱり、J君が缶ジュース2本買って戻ってくると、そこにT君の姿はなかった。J君は舌打ちしてしばらくそこでT君を待っていた。だが20分30分経ってもT君の姿がない。


J君は段々と焦ってしまい、上野駅の構内中T君を捜し回った。それでもやはり彼の姿を見る事はなかった。


そこでJ君は駅員さんに、友達とはぐれたから構内アナウンス流して欲しいような事をお願いしたんだ。駅員さんはすぐに流してくれた。T君の名前を繰り返し呼んで、ここに来るようにと。


でも放送してもT君はいつまで経ってもJ君が待っていた場所に来なかったんだ。J君は駅員さんにお礼を言うと、一旦家に帰る事にした。


実はJ君の父親は警察官だったんだ。彼はその父親に助けを求めようとしていた。もしかしたらT君は誘拐されたんじゃないか?と思っていたんだ。


上野駅から1時間ちょっとかけて東京郊外のJ君が住んでいた団地に到着して、父親を求めて家の中に入った。


そして驚きの光景が待っていた。


何と居間でおにぎりを食べているT君の姿が!


T君が言うには、J君がジュースを買いに行ってしばらくしても戻って来なかったから、自分がいたホームを廻ってJ君を探してみたけど、見つからなかったからもうこっち(東京郊外)に帰ってきたとの事だった。


J君がT君の話と時間を照合してみると、T君はJ君とはぐれてから約10分で上野駅を離れこっちに向かった計算になった。しかもT君自身の家でなく、なぜかJ君の家におじゃまして、居間でおにぎりをパクパク…


J君は心の底から思った。


「てめぇ!マジふざけんなよ!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ