表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/52

51話

「あ、そうだ! そういえば矢内君に話したい事があったんだ!」

「え? どうしたの?」


 学校への登校中、雑談で盛り上がっていた所で急に水瀬さんがそんな事を言ってきた。話したい事って一体なんだろう?


「うん。いや実はさ、矢内君にお願いしたい事があってさ」

「あぁ、うんわかった。何でも引き受けるよ?」

「えっ!? 私まだお願い事なんて何も言ってないよ??」


 桜井さんがお願い事があると言ってきたので、俺はその内容も聞かずに引き受けると言っていった。すると桜井さんはとてもビックリとしたような表情をしながら俺にそう言ってきた。


「あはは、そんなの大丈夫だよ。だって大切な彼女の頼みなら何でも引き受けるって俺は決めてたからさ。あ、でも犯罪みたいな事は流石に無理だけどね? あはは」


 俺はちょっとわざとらしく笑いながらそんな事を言ってみた。


(ちょっとキザっぽいセリフだったかもしれないかな? まぁいっか)


 百戦錬磨のリア充ギャルな水瀬さんにはこんなキザったらしいセリフなんて今までに何度も聞いてきたとは思うけど……まぁでも俺だっていつかは彼女が出来たらそんなセリフを言ってみたいと思ってたんだ。だからせっかくの良いタイミングが来たので俺はそう言ってみた。


(……あれ?)


 でもその時、何故か水瀬さんの頬はほんの少しだけ赤らんでいたように見えた。寒さにはめっちゃ強いと言っていたはずなのに……どうしたんだろ?


「……そ、そっかそっか。うん、ありがとう、矢内君。それじゃあさ、もし良かったらで良いんだけどさ……私に勉強を教えてほしいんだ!」

「え? 勉強を?」


 頬が赤らんでいた水瀬さんの事を少し心配にしていると、水瀬さんは俺に向かってそんなお願いをしてきた。


「うん。ちょっと前にさ、一緒に動物園に行った時に矢内君は私にこう言ってくれたじゃん? 私の夢のためにも勉強を頑張ってみようよ……ってさ」

「あぁ、うん、確かにそう言ったね。あ、もしかして……?」

「うん……だから私もさ……ちょっとだけ勉強を頑張ってみようかなって思ったんだ」


―― 今から獣医になるための勉強は凄い大変かもしれないけどさ、でも動物に携わる仕事に着きたいって夢があるんだったら頑張ろうよ。 俺も付き合うからさ、一緒に勉強頑張ろうよ。


 以前、俺は水瀬さんの子供の頃の夢を聞いた事があった。彼女は子供の頃から動物が本当に大好きだったようで、それで子供の頃は獣医さんになりたいと思っていたんだ。でも勉強についていけなくなってしまい、その夢を諦めてしまったという過去があった。


「まぁでも今から頑張って勉強した所で獣医になれるなんて思ってないけどさ……でも、動物に携われる仕事って沢山あると思うからさ。だからそのためにも、まずはしっかりと勉強して大学に入れるように頑張っていこうって思ったんだ」

「水瀬さん……」


 水瀬さんはそう言って握りこぶしを作りながらグッとガッツポーズをしてきた。何だかその仕草はとても可愛らしく見えた。


「でも私ってさ、まぁ矢内君も知ってると思うけど勉強なんて全然出来ないから……だから矢内君に勉強を見てもらいたいなって思ったんだ。だから本当に図々しいお願いだとは思うんだけどさ……良かったら時間がある時に一緒に勉強会をしてくれたら嬉しいんだけど……いいかな?」


 水瀬さんは若干申し訳なさそうな態度を取りながら俺にそう尋ねてきた。


「……はは、もちろん良いに決まってるじゃん! 良いよ、それじゃあ一緒に勉強会とかしようよ」

「え? 本当に良いの? でも私のせいで矢内君の勉強時間はかなり削られちゃうと思うんだけど……本当に大丈夫?」

「あぁ、うん、大丈夫だよ。それに勉強を人に教えたりするのは自分の復習に繋がるからさ。だから全然気にしないで何でも聞いて欲しいな! あ、まぁわかる範囲でしか教えられないけどね、あはは」

「……うん、わかった! 本当にありがとう、矢内君! それじゃあその……改めてよろしくね!」

「あぁ、うん、こちらこそだよ!」


 という事で俺は水瀬さんのお願いを聞き入れて一緒に勉強会をやっていく事が決まった。


「あ、それじゃあ最初の勉強会はいつにやろうか? 俺は別にいつでも大丈夫だから水瀬さんの空いてる時を教えてくれればその時にやれるよ!」

「あ、えぇっと……それじゃあ今日の放課後とかはどうかな? 今日はバイトもないから早速お願いしたいんだけど……」

「今日の放課後だね。うん、俺の方も予定は何もないから大丈夫だよ。それじゃあ場所は……ま、いつも通り文芸部の部室でやろうか?」

「え、文芸部の部室を使っても良いの? 普段からお昼休みに文芸部の部室も借りちゃってるのに、放課後も部室を借りちゃっても大丈夫なの? 部活動の邪魔にならない?」

「はは、そんなの全然気にしないでいいよ。どうせ部室にはいつも俺しか居ないんだからさ。それに文芸部の部長にも水瀬さんの事は少しだけ話しておいたんだけどさ、いつでも気軽に来ていいよって言ってたから問題無いよ」

「あ、そうなんだ。部長さんも良いって言ってくれてるのなら……それじゃあ文芸部の部室で勉強会をお願いしてもいいかな?」

「うん、わかった。それじゃあ今日の放課後から早速やっていこう!」

「うん、お願いね、矢内君!」


 という事で今日の放課後から水瀬さんとの勉強会が始まっていく事が決定した。


(水瀬さんにちゃんと教えられるようにこれからも勉強を頑張っていかなきゃだな!)


 そして普段は男友達としか勉強会なんてやって来た事がないので、今回が生まれて初めての異性との勉強会という事になる。しかも相手はめっちゃ可愛い陽キャ女子の水瀬さんだ。いやもうこれは非常に楽しみな勉強会になりそうだ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 更新楽しみに待ってました! 続きありがとうございます‼︎!
[一言] お帰り!更新ありがとうございました!
[良い点] 続きありがとうございます!!!!!(スライディング慣性ドリフトアクセルターン土下座)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ