30話
「それに前に約束したでしょ? 気が向いたら作ってあげるってさ?」
確かにそんな事を言ってくれてたけど、でもまさか本当に作ってくれるとは思わなかったので俺はビックリとしてしまった。
「え? そ、それじゃあもしかして俺もそれ食べてもいいの?」
「あはは、だからそう言ってるじゃん? そのためにちょっと大きめのお弁当箱にしたんだからさー。 はい、それじゃあさっさと食べよう?」
そう言うと水瀬さんはお弁当箱の蓋を開けてくれた。 その中には沢山の具が入ったサンドイッチが敷き詰められていた。
「わぁ、物凄く美味しそうなサンドイッチだね!」
「あはは、そう言ってくれるのは嬉しいなー。 でも本当はさ、もっと凝ったお弁当を作ろうと思ったんだよ? でも私も急すぎて何の準備もしてなかったからさ、手軽に作れて美味しい物をって事でサンドイッチにしたんだよねー」
「いやいや十分凝ってるでしょ! 彩りが凄く綺麗だし本当に美味しそうだよ!」
お弁当箱にはたまごサンドや、チーズトマトサンド、ツナきゅうりサンドなどの色々な具の入ったサンドイッチがカラフルに敷き詰められていた。 水瀬さんはああ言ってきたけど、でもカラフルに見せるための彩りを考えるのだって物凄く大変なんだから、このお弁当は十分凝っているなと俺はそう思った。
「おっ、彩りの事を言ってくれるのは嬉しいなー。 流石自分でも料理してるだけはあるね!」
「いやこれだけ凝った事してくれれば誰だって気づくでしょ、あはは」
「いやいや! そんな事ないって! 世の中にはせっかく手料理を作ってやっても、その作った料理を全く見ようともせずにスマホをずっと弄りながら食べる奴だっているんだからね!」
「え? あ、あぁ……」
水瀬さんはあまりにも具体的すぎる例を出してきたけど、まぁおそらく実体験なんだろうな。 というかどうせあのイケメン男の話だろうな。 まぁでもあまり深く追及するのは藪蛇な気がしたから俺は苦笑しながら話を反らすことにした。
「あ、あはは……そ、それじゃあ一つ貰ってもいい?」
「あぁ、うん、どうぞどうぞ。 好きな物取っていっていいからね」
水瀬さんにそう言われたので、俺は好物のたまごサンドを手に取って、そのまま口の中へと入れてみた。
「うん、物凄く美味しいよ!」
「ふふ、そっかそっかー。 でもちょっと甘めに味付けしちゃったんだけど大丈夫そうだった?」
「あぁ、うん。 俺結構甘いの好きだからさ、これくらいの甘さが一番好きかもしれないな」
水瀬さんが言ったようにたまごサンドは少し甘めの味付けをしていたんだけど、俺的にはちょうど良い甘さでとても美味しく感じた。 このたまごサンドは無限に食えるかもしれないな。
「はは、そうなんだね。 それなら良かったよ。 ふふ、それにしても矢内君は甘い物が好きなんだねー」
「はは、そうなんだよね。 いつも勉強の合間にチョコとか甘い物を爆食いしちゃってるしさ」
「あー、なるほどね。 確かに勉強は頭を凄く使うだろうから糖分補給は大事そうだよね。 はは、それじゃあ今日はたまごサンド沢山食べてしっかりと糖分補給して帰ってね」
「あはは、ありがとう。 それじゃあお言葉に甘えてもう一つ貰うね」
「うんうん、どうぞどうぞ。 好きなだけ食べて良いからねー。 ……って、あっ、今の矢内君の話を聞いてて気になった事があるんだけどさ、せっかくだからそれも聞いてもいい?」
「え? 俺に? うん、もちろんいいよ」
(水瀬さんからそんな事を言ってくるなんて珍しいな……ってか初めてじゃないか?)
いつもは俺は好き勝手に喋ってたんだけど、今日は初めて水瀬さんから聞きたい事があると言ってきた。 果たして俺に聞きたい事って一体なんだろう? 俺はちょっとだけドキドキとしながら水瀬さんの質問を待った。
「うん、あのさ、前々から聞いてみたかった事なんだけどさ……何で矢内君はそんなにも勉強を頑張ってるの?」
「うん! ……うん??」
何か思ってた質問と全然違う質問が飛んできたので、俺はちょっと変な声を出してしまった。




