22話
次の日のお昼休み。 俺は友人の達也と一緒に学食でご飯を食べている所だった。
「あれ? おでこどうしたの? 何だか少し赤くなってるけど、どこかにぶつけたの?」
「え? あ、あぁ……」
俺と達也はテーブルに向かい合いながらご飯を食べていると、達也は俺の顔を見てそう言ってきた。
「実は昨日の夜にさ、寝る前にベッドの上でスマホを弄ってたんだけど、その時に手を滑らしてスマホを落っことしちゃってさ。 そんでそのまま俺の頭にスマホの角が直撃しちゃったんだよね、あはは」
「えっ!? そ、それは物凄く痛そうだね……」
まぁ本当の事を言うわけにもいかないから、俺はそんな感じで笑いながら誤魔化した。 ちなみに腫れはもう引いているので、おでこがちょっと赤くなってるだけだ。
「いや、もう痛みはないから全然大丈夫だよ」
「あ、そうなんだ。 それなら良かったよ。 でもそんな夜遅くまでスマホを見てたって、一体何を見てたの? 何か面白い動画とかでも見つけたとか?」
「えっ!? あ、あぁ、えっと、何というか……あ、料理動画をずっと見てたんだ」
「へぇ、そうなんだ。 あぁ、そういえば矢内君も料理とか時々作ったりするんだっけ?」
「あぁ、うん、そうだよ。 そんでさ、昨日は寝る前に美味しそうなレシピ動画を見つけちゃってさ、それをベッドの上でずっと見てたってわけなんだ、あはは」
という事で俺は達也に完全なる嘘をついていった。 確かにベッドの上でスマホを弄ってはいたけど、でもそれはデートスポットについて検索をしていただけだ。 料理動画なんて昨日は一切見ていないからな。
(でもデートスポットを調べたおかげで水瀬さんと話したい事も出来たし昨日は本当に良かったわ)
俺は心の中でそんな事を思っていた。 多分今日も放課後は水瀬さんと一緒に帰る事になると思う。 そしていつも俺の話ばっかり水瀬さんにしちゃうから、今日はなるべく俺の話はしないようにしよう。 今日は水瀬さんの話をしっかりと聞くんだ。
―― ぴろんっ♪
「ん?」
その時、俺のスマホが鳴った。 これは無料チャット・通話アプリ(通称LIME)の通知音だ。 誰かからメッセージが送られてきたようだ。
「うーん? ……あっ」
―― ごめん、今日は友達と帰るから放課後は一緒に帰れないー
―― ぴこんっ♪ (しょんぼりとしたクマスタンプ)
メッセージを確認をすると、それは水瀬さんからの連絡だった。 今日の放課後は一緒に帰れないという内容のメッセージだった。 もちろん水瀬さんには友達が沢山いるので、俺と一緒に帰れない日があるのも当然だ。 でもこういう時にはちゃんとこうやって謝りメッセージを送ってくれる辺り、すっごく律儀で優しい子なんだなと改めてそう感じた。
(そっか、それじゃあ水瀬さんの話を聞けるのはまた今度だな)
という事で今日の俺は一人で帰る事となった。 本当は放課後に一緒に帰る時に水瀬さんの好きな事とか物とかを聞こうと思ったんだけど、まぁそれはまた別の機会にお願いする事にし……いや、待てよ?
(あれ? そういやこのアプリって……無料通話も出来る、よな?)
そして今ふと思ったんだけどさ……彼女(嘘)と夜に通話で話すってさ、何か良くないか? それにそういうのってカップル同士がよくやってるやつだよね?
(何だかそういうのって憧れるよなぁ)
俺もそういうカップルらしい事をやってみたいなと思ってしまったので、早速水瀬さんにこう返事を送ってみた。
―― うん、わかった。
―― あ、それとさ、
―― 良かったら今日の夜に通話とか出来ない?
とりあえず俺はこんな感じのチャットを送ってみた。 するとすぐに水瀬さんからの返事が返ってきた。
―― 通話? 何か用事でもある感じ?
―― ぴこんっ♪(疑問符を浮かべてるクマスタンプ)
あぁ、確かにそんな事を突然言われたら、何か急な用事でもあるのかなって思われちゃうよな。 まぁもちろんだけど急な用事なんて何もない。
―― いや、ただ水瀬さんと話がしたいなって
―― だから無理そうだったら全然断って大丈夫だよ
俺は素直に水瀬さんと話がしたいだけだよと、そう返事を返した。 するとまたすぐに水瀬さんから連絡が返ってきた。
―― そっかー
―― うん、わかった
―― ぴこんっ♪(OKの看板を掲げてるクマスタンプ)
―― じゃあ夜空いてる時になったら連絡するね
―― ぴこんっ♪(ペコリとおじぎするクマスタンプ)
流石に急過ぎるし断られるだろうなって思ったんだけど、意外にも水瀬さんはオッケーだよと返事を返してきてくれた。
(ま、まじか! やった!)
やっぱりこういう事はダメ元でもお願いしてみるのが大切なんだよな! という事で今日の夜は水瀬さんと初めての通話をする事になった! うん、今からとても楽しみだ!




