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「は??」
何故か連れてこられたよく分からない場所。
どうやら建物の中らしい。
そこでライドが発した言葉というか、声がそれだった。
「まぁ、うん、わかんないっすよねー。
あ、でもここご飯がとっても美味しいッスよ!!
この前なんて、拾われた子がとってきたゴブリンの脳みそ食べたっす!!」
ライドの反応を見て、そう言ったのはメイと呼ばれている魔族の少女だ。
「え、ゴブリン?たべた??」
ライドの理解が追いつかない。
そのメイの横で、ライドをじいっと観察していた少年――トオルがウカノへと視線をやり、断言した。
「大丈夫ですよ、彼は裏切り者ではありません。
それはそうと、大丈夫ですか??」
その言葉がほかならないライド本人へと届く。
「え、裏切り者って何のことっすか??」
「あー、まぁ、気にすんな」
ウカノが面倒くさそうにそう言った。
そんなウカノをトオルが心配そうにみている。
「いや!!気にするでしょ?!
なに裏切り者って??!!
俺、知らないところで妙な嫌疑かけられてません?!」
そこに、アエリカが現れる。
手をパンパンと叩いて、その場を静かにさせる。
その横には車椅子があった。
保護したあの少女――ハヅキはいない。
「はいはい。そこまで。
とりあえず、ウカノは至急医務室に連れてく。
理由は、わかってるよね?
様子見しようとしたのはわからないでもないけど、感心しないな。
すぐ医務室いけって言ったのに……」
アエリカの言葉の意味をはかりかねて、ライドは名指しされたウカノを見た。
ウカノは困ったような表情をして、しかし素直に頷いた。
そんなウカノの手をアエリカは慎重にとって、引き、車椅子に座らせた。
「了解です」
「え、あの?」
戸惑いつつも、ライドがウカノへなんのことか聞こうとする。
しかし、それよりも早くメイがこんなことを言った。
「そうっすよー。
腐ったままにしちゃ、死んじゃうっスよー」
さすがに、メイにはウカノは言い返した。
「もうちょい様子見て相談しようと思ってただけですよ」
ライドもついでとばかりに、メイに聞いた。
「えっと、腐る、とは??」
メイがコテンと首を傾げて、ウカノを指さす。
「そのお兄さん、怪我したとこから腐ってる臭いがしてるっす。
放っておくと死ぬやつの臭いっすよ?
わからないっすか?」
ライドが驚いた顔をして、ウカノを見た。
ウカノは、何故かヘラヘラと笑っている。
さらにメイが言う。
「それに、目の焦点がおかしいっす。
お兄さん、ボクたちのことちゃんと見えてるっすか?」
それに答えたのはアエリカだった。
「見えてないな。
気配だけで、誰がどこにいるのか把握してた。そうだな?」
「いや、定時連絡の時に相談しようとは思ってたんですよ?
でも、暇がなくて」
「あのなー、そんなんでお前の目的達成できると思ってるのか??」
アエリカが呆れている。
「でも、倒れるくらいのヤバさは感じなかったんで。
それに、目が変になったのはここに来てからだし。
だから、頃合を見計らって相談しようとは思っててさ」
後半の言葉はライドに向けられていた。
さすがにここでライドが怒鳴った。
「っ、ば、馬鹿か?!あんたは?!」
しかし、ウカノへのツッコミどころが多すぎて、言葉が続かなかった。
「はいはい。とりあえず医務室急ぐぞー。
大丈夫、ここのスタッフはめっちゃ優秀だからついでにいろいろ調べよう」
アエリカが言いつつウカノの乗った車椅子を押し、医務室へと直行したのだった。