中編
あれよあれよという間に連れてこられたのは、よくわからない建物の中だった。
聞けば、ここは今までウカノがいた世界ではないらしい。
異世界というらしい。
ピンクは、それらについて懇切丁寧に説明してくれた。
何が起きたのか。
何に、彼が巻き込まれてしまったのか。
黒と馬はどっかに行ってしまった。
それによると、やはり世界は壊れてしまったらしい。
ウカノが生きてきた、世界は滅んでしまったらしい。
そして、滅んだ世界は一つだけでは無いらしい。
ピンクの話だと、世界はそれこそ無限にあるのだと言う。
その、無限にある世界がいま次々壊されているのだという。
「外つ神、外来種。
まぁ、色々言い方はあるけど。
つまりはその侵攻を直に受けたってこった」
ピンクは雑にまとめた。
「お前がいた世界じゃ、どうにも最初の攻撃で殆どのやつが死んだ。
生き残った奴は、今のところお前以外確認できていない。
これは、他の調査員の報告待ちだ」
それだけ、敵が強いのだという。
最初の侵攻、攻撃で人類は滅亡した。
世界に毒が撒かれたのだという。。
さて、なぜそんなことがわかるのかと言うと。
他の世界がこうして壊れて滅んだからだ。
それを調査したからだ。
他の世界で、生存者をみつけたからだ。
そして、なによりも。
「あとは、渡航者から情報提供があったからなんだ」
「とこうしゃ??」
「簡単に言うと、いろんな世界を巡って自分の居場所を探す、旅人だな。
そいつらが、自分の探しあてた居場所が滅んだって訴えて来たんだ」
それによるとほかの世界では、最初の侵攻で人類の九割が死んだのだという。
残りの一割はあっという間に掃討されてしまったらしい。
ウカノの世界では無かったが、他の世界ではそれまで存在していた魔物とは別格の、化け物が徘徊するのだという。
とくに、生き残った一割の人類。
これをとくに念入りに、化け物を使って、外来種達は殺したのだという。
「…………」
「お前のいた世界にも、渡航者はいた。
そいつからの通報を受けて、俺たちは駆けつけた。
んで、お前を見つけたってわけだ」
脳の処理が追いつかなかった。
色んな、疑問が巡って。
でも、言葉にできない。
そんなウカノに構わず、ピンクが続けた。
「んでさ、お前、強いんだろ?!」
何故か、不謹慎なほど目をキラキラさせている。
「なにせ、あの世界で唯一の生き残りだからな」
今のところ、はつくが、事実としてはそうなる。
つまり、ほかの世界で言うなら、【強い存在】となる。
ウカノだけが生き残ったことを考えるなら、あの世界で一番強いのはウカノということになる。
「貴女の言う強さがなんなのか、わかりません」
ピンクの言葉に、ウカノは声を絞り出して答えた。
弟たちを守ることすらできなかった。
なにも、できなかった。
でも、生き残ったから強いのだという。
それは何に対しての強さなのか。
それがウカノにはわからなかった。
さっぱり、わからなかった。
「んー、そりゃ毒に対する強さとか色々だ。
でも」
そこでピンクは言葉を切った。
そのことに、ウカノは顔を上げた。
ピンクが真っ直ぐにウカノを見つめている。
まるで、視線で射抜くかのように。
「たぶん1番の理由は、お前が先祖返りだったからじゃないかなと思うんだよ」
「は?」
「まぁ、詳しくはこれから身体検査してからだけど。
そういうパターン多いよ。
多分だけど、お前の御先祖に、世界を作った神様がいる。
仮にこれを初代とすると。
お前、その初代の先祖返りなんだと思う」