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「いやいやいや!

アンタ何言ってんすか!!」


「?」


「人助けしたいと思わないんですか?!」


「他の人間がやるだろ。

つーか、お兄さん一体俺になんの用?」


「お兄さんって、同い年でしょ」


「いや、知らないよ」


「俺は、ライド!!

アンタと同じDランク冒険者ッス!!

歳は15!!」


「へぇ、元気だね。

それじゃ」


ウカノはスタスタと冒険者ギルドを出て、去ろうとする。


「いやいやいや、だーかーらー!!」


「なに?」


「一緒に盗賊退治しましょうよ!!」


「なんで?」


「なんでって、あんな悲しそうにしてる人達みすごせないでしょ?!」


ライドは冒険者ギルドに命からがら逃げ込んだ、老婆と青年を指さした。


「…………。

大丈夫、ここにいる冒険者は、そういうの見過ごせない善人ばかりみたいだから。

他の人に任せれば解決するよ。

それにそもそも、何度も言うけどDランクは盗賊退治を受けられない」


これは俺の仕事じゃないから、という言葉を飲み込んでウカノはそう言った。

事実として、青年と老婆の話を冒険者達が親身になって聞いている。


「それは、そう、そうッスけど」


「それに、仮に盗賊退治に参加出来たとして、手柄の取り合いになる。

そんな面倒ごとは避けたい」


「え?」


「他の善人達が、本当に人助けのためだけに盗賊退治に赴くと思うか?

違うだろ?

そこには、報酬が、メリットがある。

具体的に言えば、金がもらえる。

盗賊が溜め込んでるだろうお宝も手に入れられるだろうし」


「そ、それは」


「賞金首の盗賊を退治出来たってなったら、ちょっとした名声も手に入る。

でも、その名声も賞賛も、実力に見合ったランクの冒険者にしか向けられない。

俺やお兄さんみたいな低ランク冒険者が仮に盗賊退治をして、成功したとしても向けられる賞賛よりも妬み僻みが多いと思う。

なんなら同業者達に狡だなんだと言われるかもな」


「いや、さすがにそれは無いでしょ」


「どうかな」


少なくとも、他者の成功は妬まれるものだ。

その辺は気をつけなくてはならない、とウカノは信じていた。

事実、それが原因で他の村ではあるが、嫌がらせを受けた者を知っている。

農具を壊され、田んぼや畑を荒らされたという話を聞いたことがある。

そして、変に目立って謹慎中なのに冒険者活動をしていた事が学園にバレても厄介だ。

すでにダークドラゴンを退治していることがバレてしまったので、手遅れかもしれないが。


「だいたい、盗賊退治がやりたいなら俺を誘わずに一人でやれよ」


「俺みたいな弱っちい雑魚が、そんな大それたこと出来るわけないでしょ!!」


キメ顔で言うことでは無い。


「うわぁ、堂々と言うことじゃないと思うなぁ、それ」


ウカノは淡々と返す。


「でも、ウカノさんなら万が一にも守ってくれそうだし」


「よーし、とりあえずお兄さんは本音と建前を使い分けるよう練習した方がいいと思うな。

うん、盗賊退治を優先するより、とりあえずなんでも口に出せばいいってものじゃないことを学んだ方がいいと思う」


「とにかく、一緒に盗賊退治しましょーよー」


去ろうとするウカノの腰にライドはしがみつく。


「はーなーせー!!」


ズルズルと、ウカノはライドを引きずる。

ライドは負けじと、


「一緒に盗賊退治しましょーよー」


ウカノの腰にしがみついたまま、誘う。


「こーとーわーるー。

他のやつを誘え」


「誰も俺みたいな雑魚とは組んでくれないんですよ〜。

そもそも、パーティにすら入れてくれないし」


「じゃあ、あきらめ……ろ」


引きずっているライドを見下ろす。

半泣きな彼を見て、末の弟たちを思い出した。

なにかある度に、兄ちゃん兄ちゃんと頼ってきた、幼い弟と妹たち。

その顔が重なる。

そして、その死に顔を思い出す。

世界に自分だけ、一人ぼっちで取り残されたことを思い出してしまう。


「…………はぁ」


ウカノは息を吐き出すと、


「わかった。

その代わり、俺たちでも盗賊退治が出来るのか、お兄さんが受付さんに確認してくれ。

ダメって言われたら諦めろ、いいな?」


そう言ったのだった。

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