そして結婚へ
今週末は、土曜日の夕方に祐介がうちにきてそのまま泊り、翌日の昼頃に帰る予定だ。祐介はいつもお酒を持ってきてくれるので、私はすぐに食事ができるように準備をする。
思えば、外食かスーパーの弁当がいつもの私のご飯だったのに、祐介と付き合ってからはちゃんと料理をするようになった。慣れない部分はあるし失敗もするけど、でも美味しいと言ってもらえるのは嬉しくて、喜ばせたくて料理を頑張るようになった。
祐介と付き合って、気になることもたくさんあった。
けど、それ以上にいいこともあったのに。もしかしたら別れるだなんて。
本当にいいの?
気持ちが落ち着かないまま夕方を迎え、そして祐介がやってきた。
「菜月、久しぶりだね!」
いつものように出迎えると、抱きしめられキスをされた。
「一週間ぶり。 …どうぞ、あがって」
私はやっぱり祐介が好きだ。
会うと嬉しくて、これ以上ない程の幸せを感じて、別れなど到底考えられない。
けれど一人になると、いつもモヤモヤと色々なことを考えてしまって、それを解消しなければ先には進めない気がした。
「今日、シチュー!?嬉しい、俺大好きなんだ」
「この間、食べたいって言ってたから…」
「菜月は本当に色々覚えてて気遣ってくれるね」
「そうでもないよ」
「そうだよ。 …まだ付き合って間もないけど、俺は菜月が大好きで、菜月以外の人は考えられなくて、結婚したいと思ってる」
「えっ!」
いつになく真剣な顔をして、とんでもないことを言われた。
これは…、プロポーズなのか?
「結婚……?」
「うん。もうこの際だから言うけど、結婚しよう菜月!!」
私は今日、別れも覚悟で祐介と話し合わなければいけないはずだった。
だけど思いがけないプロポーズですべてが消し飛び、私は決めた。
「祐介……。うん、結婚する」
私、この人と結婚する。
「というわけで、結婚することにした」
「えー!!!」
週末に話し合うから週明けに飲もうと、あらかじめ千佳ちゃんと約束をしていた。
思いもよらない展開に、千佳ちゃんは上を向き両手を顔に覆う。
「ちょっと待って。…ビール到着前からなんなの」
「この際細かいことはどうでもいい。結婚する」
「待って待って待って!!いやいやいや、ダメだよ!!」
ちょうどビールが到着し、千佳ちゃんはそのまま半分以上飲み干す。
「私付き合ってすぐの時に言ったよね?浮かれすぎてるって」
「うん」
「菜月ちゃん、今最高に浮かれてるよ!!」
「そりゃ、結婚が決まりましたから」
「そうじゃないよ。もっと現実を見て!フィルターかかってるよ」
「なにが?」
「なんで先週まであんなに悩んでたのに、全部どうでもよくなっちゃったの?全然良くないよ。一個もよくないよ!結婚って一生一緒ってことだよ!?」
「そうだよ? …だから、私今幸せなの」
「……そうじゃないよ」
その日千佳ちゃんは、浴びるように酒を飲んでいた。
『大変不甲斐ないのですが、今日は会社を休みます』
そして二日酔いとショックで、千佳ちゃんは翌日会社を休んだ。