祐介との出会い
婚活も始めてしまえば慣れるもの。
千佳ちゃんに言われなくても予定を組み、あれから何度か行ってみた。
「最近、頑張ってるねー!」
「そうなの。なんかやる気出てきた!」
「うんうん、その調子で頑張れ!」
ダメなことは当たり前。カップルになれればラッキー。
そのくらい、気軽な気持ちで参加していた。
私にはなにも誇れるものはないし、得意なこともない。
自分の年収はまあそこそこ。だから相手の年収も高くなくていい。
理想は同じくらいの年齢・年収の人と、温かい家庭を築くこと!
…それが、一番難しいんだけど。
「こんにちは。橋本です」
「二宮です。初めまして」
婚活パーティに参加し始めてから6カ月。
カップルになれることはほとんどなく、奇跡的になれても続かないままその日にお茶をして終了。
選り好みしているわけじゃないけれど、一緒にいて楽な人がいい。
でも合う人ってなかなか見つからないし、選ばれない。
なんか疲れてきたなと思っていた時に出会ったのが橋本祐介だった。
「二宮さんは休みの日は何をしているんですか?」
「恥ずかしながら出不精で、テレビを見たりしてると一日が終わっています…」
「わかります。僕もですよ。用事がないと外に出るのが億劫で」
「出かける気持ちはあるんですけどね。なかなか」
「本当に。なかなか腰があがりません!」
祐介は人当たりがよくて、話し上手に聞き上手。
耳にすっと入ってくる少し低めの声が心地よくて、笑顔が素敵だった。
「僕、36歳なんですよ。結構おじさんでしょ?」
「そんなことないですよ!見た目、若いですよ!」
嘘ではなく本心だった。
年相応に肌の疲れはあるが、それを差し引いても2つ3つは若く見えた。
「僕、二宮さんともう少しお話したいので二宮さんを指名します」
「本当ですか!嬉しいです」
「二宮さんも僕を指名してくれたら嬉しいです。では時間なのでまた」
最初に話せるのはほんの数分。
席を移動すると、次の人とまた自己紹介から始める。
誰かをこんなに名残惜しく思うのは初めてだった。
「二宮さん、カップル成立です。おめでとうございます!」
カップルが成立するとスタッフから声がかかり、お相手の男性が外で待っているから行くように伝えられる。指名してくれるとは言ってはいたけど、本当に指名してくれたんだな、嬉しいな。顔赤くなってないかな。何を話せばいいだろう。そんなことを考えながら外に出た。
「あっ、二宮さん!」
声をかけられて顔をあげると彼は柔らかく笑い、ありがとうと言った。
「カップルになれて嬉しいです。どうぞよろしく」
「こちらこそ」
ストレートに自分の気持ちを表現してくれるのも、また魅力に思った。
「もういい時間ですし、良かったらご飯食べていきませんか?」
「ぜひ」
カップルと言っても本当に付き合ってるわけじゃない。
けれど彼の隣を歩いていると、本当のカップルになれたみたいだ。
「二宮さん、何か食べたいものはありますか?」
「そうですね…。特にないんですけどできれば洋食がいいです」
「では無難にパスタなんていかがです?」
「いいですね!大好きです」
「じゃあ、ちょっと調べてみます」
同い年くらいの男性を希望していたけれど、この人がいいなと思った。
スラっとしていておしゃれで、遊んできたわけじゃなさそうだけど女性の扱いに慣れてる。
しかも顔が好みで気が合いそう…。
付き合いたい。そう思った。